モーターとは? 種類・特徴・用途を紹介

モーターは高度に発展した現代社会を支えている装置の1つです。もしモーターが開発されていなければ、洗濯や掃除など家事のほとんどが昔のやり方のままで、自動ドアやエレベーターのような便利な設備も存在しなかったことでしょう。自動化や大量生産といった工業分野の発展も大きく遅れていたはずです。

今回は、私たちの生活になくてはならないモーターについて、原理や種類、用途を説明します。また、製品開発における最適なモーターの選び方も解説します。

モーターとは

モーターは電動機ともいい、電気エネルギーを運動エネルギー(動力)に変換する装置です。電流が磁界から受ける力を利用して回転運動に変えることができます。高効率なモーターは小型でもパワフルで、身近な家電やOA機器だけでなく電気自動車や電車、産業用ロボットなど幅広い分野で使われています。

モーターの原理は1821年にファラデーによって最初に発見されましたが、実用化に至ったのは1888年に特許を取得したテスラの2相交流電動機の発明以降です。よく知られている永久磁石を使った直流モーターは1900年代になってようやく登場しました。1917年に本多光太郎がKS鋼を発明して人工的な永久磁石の生産が可能になり、モーターが工業製品に広く使用されるようになりました。また1982年には佐川眞人らが強力な磁力を持つネオジム磁石を発明し、モーターの小型化や高性能化に寄与しています。

モーターの原理

モーターの内部にはローター(回転子)とステーター(固定子)があります。ローターにはコイルが巻かれていて、電流が流れると磁界が発生します。ステーターに設置された永久磁石と反発したり引き合ったりする力を利用して、ローターを回転させるのがモーターの基本的な仕組みです。

ただし、ただコイルに導線をつなぐだけでは、ローターが半回転(180°回転)するとコイルに初めとは逆向きの力がかかって反対向きに回ってしまいます。このままでは「半回転したあと逆回転して元に戻る」という動作を繰り返し続けることになります。一定方向に回転させるには、ローターが回ると同時に電流の向きを変える機構が必要です。それが整流子とブラシです。

整流子はコイルと導線でつながっていて、すき間を持たせた円柱状の導体金属でできています。ブラシは整流子を挟むように設置した、電源と導線で接続する板状の導体金属です。ローターが90°回転したときに整流子のすき間がブラシとの接地面に来るようにすると、電流が途切れます。しかし、回転の勢いがあるためローターはそのまま回転を続けます。すき間を超えて再び整流子とブラシが接したとき、初めのときとは逆向きに電流が流れますが、かかる力の向きは同じです。

このようにモーターは整流子とブラシのおかげで電流の向きを交互に変えられ、一定方向に回転し続けることができます。しかし、整流子とブラシが接していることで、摩擦による発熱や損傷、回転エネルギーの損失が発生します。少しだけ回転させて止め、また回転させるといった細かいコントロールも困難です。これらの欠点を改善するために、ブラシをなくしたブラシレスモーターや、回転角度を制御できるステッピングモーターといった多種多様なモーターが発明されてきました。

モーターの種類

モーターは直流電源で動くDCモーターと交流電源で動くACモーターに大別されます。DCモーターの代表的な種類はブラシ付モーターやブラシレスモーター、ステッピングモーターです。ACモーターには誘導モーターと同期モーターがあります。以下、各種のモーターを紹介します。

DCモーター

DCモーターのうち、ブラシ付モーターは中学校の理科でも習う典型的な構造を持つモーターです。ブラシ付モーターからブラシと整流子をなくしたのがブラシレスモーターで、さらに回転角を制御できるようにしたのがステッピングモーターです。

ブラシ付モーター

ブラシ付モーターは、ローターの整流子にブラシが接触してコイルに電流が流れます。ローターが回転しても、整流子によって同じ回転方向を維持することが可能です。しかし、整流子とブラシが接触しているためエネルギーロスが発生し、部品の摩耗が起こる欠点があります。

ブラシ付きDCモーター詳細はこちら
ブラシ付モーター

ブラシレスモーター

整流子とブラシを排して、電子回路によってモーターの回転を制御するのがブラシレスモーターです。ブラシ付モーターと逆の構造になっていて、ローター側に永久磁石、ステーター側にコイルを取り付けます。永久磁石が内側にあるインナーローター型と、外側にあるアウターローター型があります。

ブラシレスモーターの電流方向を切り替えるのはインバータです。センサで永久磁石の位置を検出し、速度制御機を通じて速度司令を受けたインバータがステーターに取り付けられたコイルへの電圧を制御します。ブラシ付モーターと比較して速度制御の安定性などが改善されますが、装置が複雑になるのが難点です。

ブラシレスDCモーター詳細はこちら
ブラシレスモーター

ステッピングモーター

ステッピングモーターは、パルス信号によって回転角度や回転速度を制御するモーターです。永久磁石と巻線電流によって励磁されるPM型、ステーターの巻線電流で励磁されるVR型、その両者の長所を組み合わせたHB型の3種類があります。高トルクで自己保持力に優れ、位置制御をしやすいのが特長です。特にHB型は分解能が高く、高精度な位置決めや動作制御が求められる用途に利用されています。

ステッピングモーターの弱点は「脱調」です。脱調とは急な速度変化や大きな負荷が起こったときに、パルス信号と同期できなくなることを意味します。常に最大電流を巻線へ流して磁力を高めておくことで脱調を防止できますが、効率が低下したり発熱したりするのがネックです。

エンコーダを取り付けてフィードバック制御を可能にしたステッピングモーターなら、脱調の心配がない運用を可能にします。高精度の制御性を持ちながら比較的コンパクトであるため、産業用ロボットや検査装置のようなFA機器に採用されています。

ステッピングモーター詳細はこちら
ステッピングモーター

ACモーター

ACモーターは交流電源で駆動するモーターです。構造によって以下の2つに大別できます。

誘導モーター

誘導モーターは「アラゴの円板」の原理を応用したモーターです。ステーター側の磁界を回転させることで誘導電流を流し、電流と磁界の作用で発生する力によってローターが回転します。工場などでは、120°ずつ位相がずれた200Vの3相交流電源が用いられます。家庭用の単相AC100Vで誘導モーターを使えるようにするには、コンデンサによって位相をずらす方法をとるのが一般的です。

ローターはステーターの回転磁界とは同期せず、遅れて回転します。このことから、誘導モーターは非同期モーターとも呼ばれています。ブラシと整流子がなく構造はシンプルですが、すべりが発生するためエネルギーロスがあり、誘導電流によってローターが発熱するのも欠点です。

同期モーター

ステーター側の回転磁界とロータの回転を同期させるモーターです。同期モーターはロータの構造によって、電磁石形、永久磁石形、リラクタンス形、ヒステリシス形に分類できます。中でも、ネオジム磁石の採用により小型化・高性能化した永久磁石形は、電気自動車やハイブリッドカー、エアコン、冷蔵庫、洗濯機などで普及が進んでいます。

同期モーターは誘導モーターのようにすべりが発生せず、回転速度を一定に保てるのがメリットです。一方、速度制御が難しく、乱調や同期はずれを起こすといったデメリットもあります。

モーターの用途

モーターは社会のいたるところで使われています。電気で動く機器・機械なら、ほぼモーターを搭載しているといっても過言ではありません。以下、分野別にモーターの用途を紹介します。

モーター選びのポイント

まず、製品用途にあった性能を持つモーターを知ることが重要です。モーターごとの性能を知るには、構造や特性の違いも理解しなければなりません。ここでは、モーターの選び方のポイントを解説します。

用途

モーターの用途は、ファンモーターとファンモーター以外に大きく分けることができます。ファンモーターは送風や冷却、給気・排気を目的とし、ファンモーター以外では機器もしくは機構の動力源として活用することが目的です。

ファンモーターには軸流ファン、ブロワ、遠心ファンといった種類があります。単純な送風だけに使うのなら軸流ファンが最適かもしれません。ただし、部品が多く内蔵された機器の排熱をおこなうときには軸流ファンではうまく空気を送れません。このような場合には最大静圧が高いブロワや遠心ファンを採用すると、空気が流れにくい空間でも給気・排気が可能になります。

モーターを駆動装置として使用する場合、細かい制御が必要かどうかで選ぶモーターが大きく変わります。扇風機のように一定の回転速度を保てばよい機器には、寿命が長くて低コストのモーターを採用すれば機能的に問題ないでしょう。しかし、位置決め精度や高い制御性が求められる機器・設備には、回転角度・回転速度を制御できるステッピングモーターやサーボモーターなどが適しています。

性能

ファンモーターは、種類によって構造と原理、特性が違います。構造的な大きな違いの1つは給気と排気の向きです。軸流ファンはファンの回転軸と給気・排気の方向が同じですが、ブロワと遠心ファンの排気は垂直方向になります。また、ファンモーターの性能を比較する際に用いるのが「P-Q特性」です。P-Q特性は風量(P)と静圧(Q)の関係を示したもので、例えば軸流ファンなら、P-Q特性から旋回失速領域の範囲を知ることができます。サイズや消費電力は、ファンの最大風量と最大風速に関係します。

駆動装置のモーターは、用途別の種類がファンモーター以上に多種多様です。回転速度、トルク、分解能、制御性、ギアボックスの有無など性能を左右する要素が多く、小型化や軽量化が必要なら構造的な向き不向きも考慮しなければなりません。一例としては、パソコンやテレビに内蔵されるHDDスピンドルモーターが挙げられます。小型で高回転かつ高精度、長寿命といった複数の要件を満たすモーターが必要です。モーターの性能が記憶容量や処理速度といったHDDスペックに大きく影響します。

ミネベアミツミなら用途に合わせた最適な製品をご提案

ミネベアミツミでは用途ごとに適したモーターを開発・生産しています。各種ファンモーター・ブロワから、OA機器やデジタルAV機器に最適なブラシレスモーター・ステッピングモーターまでラインナップが豊富です。

ミネベアミツミはモーターの性能向上に寄与する技術開発にも取り組んでいます。運動エネルギーを効率よく伝える「ボールベアリング」の超精密加工と大量生産の実現、電気自動車やハイブリッドカーの走行性能と電力消費率を改善する回転角センサ(レゾルバ)の開発と量産化など、次世代の最先端技術をリードする企業です。

自動車、情報通信、ロボティクス、産業機器、家電、AV機器、OA機器、医療・介護と、幅広い分野で製品提供をおこなっているミネベアミツミは、さまざまなモーターの用途に精通しています。貴社の製品にどんなモーターが最適か、弊社の知見と技術力に基づいたご提案をさせていただきます。ぜひお問い合わせフォーム」にてお問い合わせください。