ひずみゲージを利用した変換器で荷重・圧力・トルク・加速度などを電気的に測定、遠隔指示、記録、制御を行えるなど広い範囲の応用が可能です。応用分野も機械、船舶、飛行機、土木、建築等の研究・工業分野からはかりとしての商業分野や、体重計として家庭用分野まで拡大してきております。
当社では、1952年に初めてひずみゲージを製造して以来、ひずみゲージメーカーとして、その量産技術を海外にも展開し、絶大な供給力に加えて安定した品質のひずみゲージを製造しています。
ひずみゲージの特長 / ひずみゲージの各部の名称 / ひずみゲージの原理 / 自己温度補償の原理 / ひずみゲージの測定 / ひずみゲージによる測定例 / ゲージ率の補正 / ひずみゲージの印加電圧 / 各種一般材料の物質的性質
ひずみゲージの特長
ひずみゲージ検査工程
ひずみゲージの材料やグリッド形状には、耐疲労性を考慮した設計がなされており、安定性を要求される静ひずみ測定ばかりでなく、耐疲労性を要求される動ひずみ測定にも使用できます。
全品種が自己温度補償されており、多様な熱膨張係数を持った被測定物に対して広い温度範囲でご使用頂けます。
ひずみゲージの各部の名称
ひずみゲージの原理
金属抵抗体が伸縮するとその抵抗値が変化します。
ひずみゲージはこの原理を利用する為、約5μm厚の金属抵抗体に上図の様なパターンをプリントし、エッチング加工した物です。ここで、ひずみεはΔLをLで除して式(1)に定義されます。
更に、ひずみと共に変化する抵抗値Rの間には、式(2)が成立します。
Kはゲージ率と呼び、ひずみゲージの感度を表す比例定数です。このゲージ率は金属抵抗体の材料によって異なりますが、
一般に広くひずみゲージに用いられているコンスタンタン(銅、ニッケル合金)はほぼ2を示します。
自己温度補償の原理
ひずみゲージが被測定体に接着されている時、ひずみゲージの金属抵抗体の線膨張係数(λg=15.5×10-6/℃)と被測定体線膨張係数(例えばアルミニウムλa=23×10-6/℃)の差により温度による見かけひずみが現れます。アルミニウムの場合23-15.5=7.5×10-6/℃、従って、10℃で75×10-6と無視できない大きな誤差となります。これをひずみゲージを形成する金属抵抗体の温度抵抗係数()で相殺するようにしたのが、自己温度補償の原理です。この時、見かけひずみは式(3)で表されます。
弊社のひずみゲージは、右のグラフの様に200 ℃までの幅広い範囲で±1.8×10-6/℃の誤差範囲に入るよう調整されています。
ひずみゲージの測定
ひずみゲージのひずみによる抵抗値変化は極めて微少であり、これをホイートストンブリッジ回路を利用して、電圧変化として取り出します。このホイートストンブリッジを使用することにより温度による見かけひずみを取り除いたり、ひずみゲージの組み方で出力電圧を倍増して取り出すことができます。
(1) 1ゲージ法(2線式)
ブリッジの1辺にひずみゲージをいれた最も簡易な手法です。ここでは、ゲージリード(r1、r2)がブリッジの中にあるため、ゲージリードが長く温度変化を受ける時無視できない大きな見かけひずみが現れます。下のグラフは、7/0.12のリード線10 mの見かけひずみです。
(2) 1ゲージ法(3線式)
同様にブリッジの1辺にひずみゲージをいれたものですが、ゲージリードの一方がとなりの辺に入るため、ゲージリードの温度による見かけひずみは、ブリッジのなかで r2と r3は打ち消し合い現れません。(下のグラフを参照ください)
リード線による見かけひずみ
(3) 2ゲージ法(ハーフブリッジ)
個々のひずみゲージは、被測定材の線膨張係数に合わせて自己温度補償されていますが、ブリッジの隣り合う辺にひずみゲージを用いることで更に温度による見かけひずみを小さくすることができます。また、2枚のゲージを反対符号のひずみを受けるようにすると、式(5)の様に、最大1ゲージ法の2倍の出力を得ることが出来ます。
(4) 4ゲージ法(フルブリッジ)
2ゲージ法と同じ原理で温度補償ができ、式(6)の様に、最大1ゲージ法の4倍の出力を得ることができます。
ひずみゲージによる測定例
(1) 引張圧縮応力

1ゲージ法
右図の様な丸棒の応力σは次式により求められます。
2ゲージ法
Bひずみゲージを右図の様に加えるとひずみ量は、ポアソン比分増加します。従ってA、Bひずみゲージの合算されたひずみεから応力σは次式より求められます。
4ゲージ法
引張圧縮以外に曲げ応力が予想される場合には、柱の反対面にもう1対のA、Bのひずみゲージを追加し4ゲージ法とする事で曲げひずみを消去できます。この場合、4枚のひずみゲージ分のひずみεから応力δは求められます。
(2) 曲げ応力

1ゲージ法
引張圧縮応力と同様、右図の様な片持ちはりのAひずみゲージのひずみεからゲージ貼付け部分応力σは次式より求められます。
2ゲージ法
A、Bによりひずみ量は2倍になります。 従ってひずみεからゲージ貼付け部分応力σは次式より求められます。
一方、計算から次式で曲げ応力を求める事ができます。
次に、代表的な曲げモーメントと断面計数を示します。
≪曲げモーメントの例≫
型 式 |
条 件 |
曲げモーメント M |
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≪断面係数≫
図 式 |
断面係数 |
断面2次モーメント |
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(2) 丸棒ねじれ
上図の様にひずみゲージを丸棒の中心線に対して45°方向に貼り付けた時、ねじりによるひずみεから次式によりせん断応力が求められます。
逆に下表のせん断応力を式(12)に代入し、ひずみεを求める事ができます。
No. | 断面図 | せん断応力 ![]() |
No. | 断面図 | せん断応力 ![]() |
1 | ![]() |
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3 | ![]() |
![]() |
2 | ![]() |
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4 | ![]() |
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ゲージ率の補正
(1) ひずみゲージのゲージ率補正
ひずみ計にゲージ率調整機能が無く、ひずみゲージのラベルに表示されているゲージ率と異なる場合は、右の式にて補正して下さい。
(2) リード線が長い場合のゲージ率補正
ゲージのリード線が長い場合、その抵抗値がホイーストンブリッジに含まれ、ゲージ率が低下します。右の式にて補正して下さい。弊社のビニル線付ひずみゲージは、ビニル線を含めたゲージ率をラベルに表示しています。
≪リード線の抵抗値≫
種 類 |
AWG |
断面積(mm2) |
構成(本 / 径) |
抵抗値(Ω/m往復) |
単線 |
32 |
0.032 |
1 / 0.20 |
1.15 |
- ” - |
30 |
0.051 |
1 / 0.25 |
0.74 |
撚線 |
- |
0.08 |
7 / 0.12 |
0.45 |
- ” - |
- |
0.11 |
10 / 0.12 |
0.31 |
- ” - |
- |
0.3 |
12 / 0.18 |
0.12 |
ひずみゲージの印加電圧
ひずみゲージに電流が流れると、自己発熱し温度ドリフトが現れ測定精度に影響します。従って、ひずみゲージへの印加電圧は、接着されたひずみゲージの放熱性で左右されます。発熱量が次の記載数値以下になる様に印加電圧を設定されることを推奨します。
≪ひずみゲージ印加電圧算出の参考値≫
W/mm2(ワット/グリッド面積)
銅、アルミ等 |
鉄、鋼等 |
ステンレス |
|
---|---|---|---|
静ひずみ測定 |
0.02 |
0.01 |
0.005 |
動ひずみ測定 |
0.02 |
0.02 |
0.11 |
例えば3 mm角グリッドの350 Ωひずみゲージを鋼材に接着した場合は以下の様になります。
許容発熱量 W=0.01×9=0.09 ワット
W=V2/Rより 0.09=V2/350 V=5.6 ボルト
尚、この電圧はひずみゲージ1枚に印加する値なので4枚のひずみゲージでブリッジを構成している場合、ブリッジへの印加電圧は2倍の11.2ボルトとなります。
各種一般材料の物質的性質
線膨張係数 ×10-6 |
縦弾性係数 })E(GPa{kgf/cm²}) |
横弾性係数 G(GPa{kgf/cm²}) |
ポアソン比 ν |
|
低炭素鋼 |
11.3~11.6 |
206 {2.1×106} |
79 {0.81×106} |
0.28~0.3 |
中炭素鋼 |
10.7 |
206 {2.1×106} |
82 {0.84×106} |
0.28~0.3 |
ニッケル鋼 |
13.3 |
204 {2.08×106} |
82 {0.84×106} |
0.28~0.3 |
マルテンサイト系 ステンレス鋼 |
13.3 |
200 {2.04×106} |
78 {0.8×106} |
0.28~0.3 |
オーステナイト系 ステンレス鋼 |
17.3 |
197 {2.01×106} |
74 {0.75×106} |
0.28~0.3 |
析出硬化型 ステンレス鋼 |
11 |
204 {2.08×106} |
82 {0.84×106} |
0.28~0.3 |
無酸素銅 |
17.6 |
117 {1.19×106} |
46 {0.47×106} |
0.34 |
黄銅 |
20.6 |
103 {1.09×106} |
38 {0.39×106} |
0.34 |
リン酸銅 |
18.2 |
110 {1.12×106} |
42 {0.43×106} |
0.34 |
ベリリウム銅 |
17.1 |
129 {1.32×106} |
- |
0.34 |
ニッケル |
13 |
204 {2.08×106} |
81 {0.83×106} |
- |
ジュラルミン(A2017-T4) |
23.4 |
69 {0.70×106} |
- |
0.34 |
超ジュラルミン(A2024-T4) |
23.2 |
74 {0.75×106} |
29 {0.30×106} |
0.34 |
チタン |
8.4 |
106 {1.08×106} |
44 {0.45×106} |
- |
シリコン |
5 |
108 {1.1×106} |
- |
- |
コンクリート |
11 |
29 {0.3×106} |
10 {0.1×106} |
0.1 |
ガラス |
9 |
59 {0.6×106} |
29 {0.3×106} |
0.25 |
木材 |
5 |
9.8 {0.1×106} |
- |
- |