NMB_Ball-Bearing-Products-Catalog_JP


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1-4…軸受の選定⑭…トルクトルクとは物体を回転させるために必要な力を指します。トルク一般に、玉軸受は滑り軸受に比べてトルクが低いことが知られています。特に回転開始時は転動体(玉)が存在する転がり玉軸受は起動時のトルクが滑り軸受に比べて特に低くなることが知られています。玉軸受のトルクに大きな影響を与える要素は転動体の転がり抵抗のほか、保持器の滑り摩擦、潤滑剤の粘性抵抗などが挙げられます。特にミネチュア・小径転がり玉軸受においては、動力源となるモータなどの出力が小さい場合が多く、トルクに影響を与える要素の検証が必要となる場合があります。玉軸受のトルクには「起動トルク」と「回転トルク」があります。(1)起動トルク回転していない玉軸受を回転させようとするときの初動・初期のトルクです。回転していない玉軸受は、予圧など軸への荷重が加わっている場合は、それぞれの玉と接触する起動溝(面)で接触弾性変形をともない停止しています。回転させる際は、弾性変形を乗り越えるための力や玉と軌道溝にある潤滑剤を乗り越えるための力などが必要となることから、回転トルクよりも大きな力が必要となります。(2)回転トルク回転中に潤滑剤が玉・軌道溝・保持器により攪拌される粘性抵抗に、玉と保持器の滑り摩擦、玉と軌道溝との転がり摩擦などの抵抗を回転トルク特性と呼びます。玉軸受の回転トルクは発熱や、モータ類では立ち上がり起動電流値、定格電流値、定格回転速度、電流値変動、回転ムラなどの現象に関わりがあります。(3)潤滑剤の特性とトルクに関連する現象についてミネチュア・小径転がり玉軸受のトルクにおいて、動力源となるモータなどの出力が小さい場合が多いことから、潤滑剤の特性の考慮がたびたび重視されます。潤滑剤、特にグリースは回転時間の経過とともに玉と軌道溝の潤滑部からグリースの大部分が排除され、トルクは低下し定常値に落ち着くことが知られていますが、この現象が比較的早く起こるグリースをチャンネリング(channeling)型グリースと呼びます。一方で、潤滑部からグリースが十分に排除されず、また排除されても潤滑部への再移動が継続する挙動を示すグリースをチャーニング(churning)型グリースと呼びます。定常値および定常値に達するまでの時間はグリースの種類、グリースの封入量、回転速度により異なりますので、玉軸受単品によるトルクの測定や実機に組付けた状態での電流値などの検証が必要です。66


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