モーターの選び方を紹介

製品の駆動装置としてモーターが必要になった場合に「どのように選定すればよいのか見当がつかない」という人もいるかもしれません。市場には多種多様なモーターが存在し、それぞれの仕様や性能が異なっているためです。今回は、それぞれのモーターの特長を紹介した上で、適切なモーターを選定する方法について解説します。

それぞれのモーターの特長

適切なモーターを選ぶためには、それぞれの種類と特長を知ることが必要です。モーターの種類は、使用する電源によってDCモーターとACモーターに大きく分けられます。ここでは、DCモーターとACモーターの代表的な種類を紹介し、各モーターの特長を解説します。

DCモーター

DCモーターは直流電源で駆動するモーターの総称です。代表的なDCモーターとして、ブラシ付モーター、ブラシレスモーター、ステッピングモーターがあります。以下、各DCモーターの特長を説明します。

ブラシ付モーター

ブラシ付モーターは、電圧を制御するだけで回転数やトルクを調整しやすく、起動時に最大トルクを出せることから起動性にも優れたモーターです。ブラシ付モーターには次のような特長が挙げられます。

制御性がよく扱いやすい

ブラシ付モーターは構造と動作原理がシンプルで、制御のために特別な装置が必要ありません。直流電源と接続するだけで駆動させることができます。もちろん、駆動電子回路を取り付ければ速度制御も可能です。消費電流に比例して出力トルクが変化する特性を持っているので、扱いやすいモーターです。

構造がシンプルで安価

ブラシ付モーターは簡単な構造で必要な部品数が少ないため、安価に入手することができます。生産量の多さも低コストである要因の1つといえるでしょう。子ども向けのおもちゃやラジコンなどの駆動装置にも採用され、安価な商品を広く提供することに役立っています。

ブラシレスモーター

ブラシレスDCモーターは、定格トルク内の運転時に負荷が変化しても安定した回転速度が得られるモーターです。低速から定格回転速度まで連続運転する場合に、トルクを一定に保つことができます。ブラシレスモーターの主な特長は以下のとおりです。

安定した速度制御ができる

ブラシレスDCモーターには速度制御器が備えられています。速度制御機は速度司令と速度フィードバック信号を比較し、モーターへの印加電圧を調整する装置です。これにより低速時から安定した速度制御ができます。

用途に合わせて仕様が選べる

ブラシ付モーターに比べて複雑な構造になるため、仕様が多種多様です。種類が多いブラシレスモーターの選定は難しく思われがちですが、用途に合わせて細かく選択できるモーターであるともいえます。
構造はインナーローター型やアウターローター型が選べ、永久磁石の装着法もSPMにするかIPMにするかで特性が異なります。センサに関しても、ホールセンサやエンコーダ、レゾルバといった複数の選択肢がありますが、場合によってはセンサレスのブラシレスモーターを選ぶことも可能です。

小型化・薄型化ができる

ネオジム磁石の使用により、小型あるいは薄型でも出力が大きいという特長があります。ブラシレスモーターを採用して駆動装置部分を小さくすれば、製品の小型化・省スペース化も可能です。
小型で高出力なブラシレスモーターは安定した速度制御も可能なため、多くの製品と設備に用いられています。空調や冷蔵庫や給湯器、その他の住宅設備、プリンタやコピー機といったOA機器、工場のクリーンルームや検査・分析装置、計測機器など用途は広範囲です。自動車部品や医療機器などの安定性・安全性が求められる分野でも、高性能なブラシレスモーターが採用されています。

ステッピングモーター

ステッピングモーターは構造と動作原理が複雑ですが、より繊細な制御ができるモーターです。以下のような特長があります。

高いトルクが得られる

ステッピングモーターには永久磁石が使われるため、高トルクを実現できます。直進運動に変換されるときのトルクが大きいだけでなく、通電時のホールディングトルク(停止位置を保持する力)にも優れています。

停止時でも自己保持力が高い

通電していなくても一定の自己保持力を持っているため、回転軸を固定しておくことが可能です。これをディティントトルクといい、永久磁石の吸引力によって軸の角度が保持されます。

位置制御がしやすい

ステッピングモーターはパルス数に比例させて回転角度を制御できます。オープンループで簡単に位置制御ができるため、フィードバックは不要です。

分解能を持つ

分解能はモーターの回転をどれだけ細かく制御できるかを表す数値です。1回転をステップ角度で割ることで、1パルスあたりのモーター回転角が求められます。モーターの位置決め精度にかかわる要素で、分解能が高くなるほど繊細な動作制御が可能です。
ステッピングモーターは分解能とトルクの両方を要求される用途で採用されています。身近な使用例としては、デジタルカメラや家庭用プリンタのような電子機器、エアコンや窓シャッターといった住宅設備などです。銀行ATMや自動販売機、監視カメラのように街なかで見られる商用機器にも数多く利用されています。工場では、産業用ロボットや搬送機械などの駆動装置に用いられています。

ACモーター

ACモーターには誘導モーターと同期モーターがあります。交流電源で駆動する構造を持つため、DCモーターの特長が大きく異なります。以下、誘導モーターと同期モーターの特長を解説します。

誘導モーター

誘導モーターはローターとステーターの回転磁界が同期しないため、非同期モーターとも呼ばれます。単純な構造でコストが安く、大型化するほどエネルギー効率が高くなるのが特長です。誘導モーターには「かご型モーター」と「巻線型モーター」があります。

かご型モーター

運転設備が少ないため保守や修理の手間が少なく、比較的低コストです。運転設備が少ないため保守や修理の手間が少なく、比較的低コストです。

巻線型モーター

始動時の回転がスムーズで、運転速度を変えても電流変化を小さく抑えられます。

同期モーター

同期モーターは誘導モーターのようにすべりが発生せず、一定の回転速度を維持できるのが特長です。ネオジム磁石を使った小型で高性能な同期モーターは、電気自動車やハイブリッドカーにも採用されています。

モーター選びの最初のステップ

モーターの種類は非常に多く、何を基準に選べばよいか迷ってしまうものです。まずは使用用途が何であるかを確認することから始めましょう。

使用用途による選定

「モーターを何のために使うのか」が、モーター選びの第1ステップです。大まかには「ファンの動力源にする」「機器制御の動力源にする」の2つに分けられます。

風を作るモーターか否か

風を作るモーターとして使用する場合には「軸流ファン」「ブロワ」「遠心ファン」といったファンとモーターが一体化した製品を選ぶことになります。

軸流ファン

軸と同一方向に給気・排気をするためのファンです。単純な送風や冷却、換気が目的なら軸流ファンが適しています。軸流ファンは価格も安いです。

ブロワ

ファンよりも強い圧力で給気・排気がおこなえる機械をブロワといいます。高い静圧を得やすく、部品が密集していて通風抵抗が高い装置内にも送風可能です。吐出口から空気をまとめて送り出す構造のため、局所的に冷却する用途にも向いています。また、吸気と排気の方向を変えられるため、軸流ファンでは排気方向に問題がある場合にも用いられます。

遠心ファン

遠心ファンは中心部に配置されたモーターに羽根車が付いた構造をしています。羽根車が回転することで側面から放射状に風を吐き出す仕組みです。高い静圧で大きな空気を動かせるため、大型装置内部全体の給気・排気に使用されます。吸い込みと吐き出しの方向が90°変わるため、軸流ファンが適さない設置場所にも採用可能です。

動力を生むモーター

機器を制御するための動力を生むモーターを選ぶときは、一定の回転速度で動かすのか、精密な制御をおこなうのかが重要な選定基準となります。低コストで制御性がよく、連続運転ができればよいという場合にはブラシ付DCモーターが最適です。位置決め精度が必要なら、ステッピングモーターやサーボモーターを選ぶことになります。工場などで交流電源を用いる際は、ACモーターの中から要件に合致するものを選択しましょう。

モーターの選び方

用途によってモーターの種類が決まったら、個別の性能を比べて選定をおこないます。例えば、「動力を生むモーターで位置決め精度が必要」という要件でステッピングモーターを選ぶ場合に、さらにステッピングモーターの各性能を検討するという流れです。
モーターの性能を表す要素として、次のようなものがあります。

出力回転数

モーターが1分間あたりに出力できる回転数です。一般的には「min-1」または「rpm」という単位を付けます。回転速度と呼ぶこともあり、モーターの最も基本的な性能といえるでしょう。1分間に5000回転するモーターの場合、「5000min-1(5000rpm)」と記載されます。トルクとともに、モーターの出力を決める要素です。

トルク

モーターが生み出す力で、高トルクであるほど負荷にも強くなります。単位は「Nm」です。トルクが「20Nm」と表されているモーターの場合、回転軸に1mの棒を取り付けたとすると先端で20Nの力を発揮できるということになります。

位置決め精度

ステッピングモーターのように精密な操作をおこなうモーターに要求される性能です。また、「繰り返し位置決め精度」と記載されている場合は、位置決めを繰り返しおこなったときの誤差を表します。エンコーダ付ステッピングモーター(ステッピングサーボモーター)は、より高い位置決め精度が実現可能です。

静粛性

製品用途によってはモーターの静粛性が求められる場合があります。駆動時の騒音を低減すれば、モーターの静粛性を高められます。モーターから発生する騒音は、電磁騒音、通風騒音、機械騒音の3つです。
電磁騒音は電磁力に起因する振動によるもので、電流や回転速度を調整して対策します。通風騒音の発生はファンや吸い込み口・吐き出し口の形状が原因となっているケースが多いです。ファンの回転速度を下げるのも有効な対策になります。機械騒音は軸受の振動が主な原因であるため、高品質なベアリングを採用することで改善できます。

コスト

モーターの選定ではコストも重要な要素です。モーターの種類やサイズ、出力によって価格は異なります。また、採用している永久磁石、電磁鋼板、軸受の品質も価格を大きく左右します。高性能になるほどコストも上昇するため、オーバースペックにならないように選ぶことが大切です。設備などで長期的に使用するモーターを選定する際は、修理・交換のコストやメンテナンス性も考慮しましょう。

サイズ

製品・設備内のモーター設置スペースに応じたサイズを選びます。外径、高さ、長さだけでなく、モーターの形状も考慮することが必要です。カタログ等に掲載されている外観図が参考になります。

エネルギー効率

エネルギー効率とは、入力電力に対する機械出力の割合(%)です。エネルギー効率が高いモーターはランニングコストの削減にも寄与します。また、トップランナー制度によって省エネ製品の普及が進んでいる背景を踏まえると、より高効率なモーターを選定していくことが推奨されます。

※トップランナー制度:自動車や家電などのエネルギー消費が大きい「特定機器」を対象にして、エネルギー消費効率の基準値を設定する制度。

寿命

モーターの寿命とは、仕様どおりの性能が発揮できなくなる時点のことです。長期にわたって故障なく動作していたとしても、モーターの設計寿命を過ぎてしまっているケースがあります。

モーターの寿命は、基本的に軸受の寿命と関係します。軸受の寿命は、主にグリースの劣化や転がり疲れによるものです。電子回路付モーターの場合はコンデンサの寿命が、ギアボックス付モーターの場合は歯車の寿命がモーターの寿命となることもあります。

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