ブラシ付DCモーターの種類・原理・特性・長所・注意点を解説
直流電源で回転するモーターを「DCモーター」といいます。ブラシ付DCモーターもその1つで、模型やラジコンを乾電池で手軽に動かせる動力装置です。今回は、ブラシ付DCモーターとは何か、種類や動作原理、特性を踏まえて、長所・注意点などを解説します。
ミネベアミツミのブラシ付DCモーターは標準の丸型・小判型に加え、寸法を抑えながら従来品比トルク2倍を実現する角形(Sシリーズ)をラインアップしています。さらに高トルクのギアボックス付きタイプや、振動モーターもご用意。またご要望に合わせてギア・センサー・コネクタを組み合わせたユニットとしてもご提供可能です。具体的なカスタムオプションとカスタム例は「ブラシ付DCモーター カスタム総合ガイド」からご確認いただけます。
ブラシ付DCモーターにはどのような種類がありますか?
ブラシ付DCモーターは大きく分けて、ステーター(固定子)に永久磁石を用いた「永久磁石界磁型」と、電磁石を用いた「電磁石界磁型」の2種類に大別されます。
永久磁石界磁型
ステーターに永久磁石を用いたDCモーターです。電機子の形式によって、「スロット型」「スロットレス型」「コアレス型」の3種類に分けられます。
スロット型
スロットは磁気コアに設けられた溝で、抵抗トルクを発生させます。抵抗トルクはコギング、あるいはディテントトルクとも呼ばれ、非通電時にローターに平衡位置を持たせることが可能です。
スロットレス型
スロットがないためコギングが起こらず、ローターの回転がスムーズです。スロット型に比べて振動や騒音を抑えられます。
コアレス型
ムービングコイル型とも呼ばれ、鉄心(コア)を持たないのが特徴です。慣性モーメントが小さく、応答性や加速性に優れます。
電磁石界磁型
電磁石界磁型のDCモーターは、永久磁石ではなく電磁石によって界磁束を発生させるモーターです。中型以上のモーターに採用される型で、1馬力程度の出力があります。界磁巻線と電機子巻線との結線方式が3種類あり、それぞれ「分巻(ぶんけん、ぶんまき)モーター」「直巻(ちょっけん、ちょくまき)モーター」「他励(たれい)モーター」に分類されています。
分巻モーター
集中巻ステーターと整流子ローターで構成され、 界磁巻線と電機子巻線を並列に配置したDCモーターです。界磁電流が電機子電流の影響を受けず、トルク対回転数、トルク対電流の特性が直線性を示します。モーターシャフトへの負荷が変動しても、回転速度に大きな変化は出ません。
直巻モーター
直巻モーターは界磁巻線と電機子巻線が直列に配置されます。出力が界磁電流の二乗に比例するため、回転速度は負荷の大きさによって変化するのが特徴です。起動直後や低速運転時に大きなトルクを発生し、低負荷状態では回転速度が上がります。
他励モーター
他励モーターは界磁巻線への電流とローターの巻線への電流を別の電源に接続します。それぞれの巻線の電流を個別に制御できるため、速度制御の自由度が高いDCモーターです。
ブラシ付以外のDCモーター
DCモーターには、ブラシ付DCモーター以外に「ブラシレスDCモーター(BLDCモーター)」と「ステッピングDCモーター」があります。
ブラシ付DCモーターの動作原理とは?
ローター(回転子)のコイルに繋がった「整流子」に、電極である「ブラシ」が接触して直流電流が供給され、発生した磁界の反発と吸引を利用して回転する仕組みです。構造としては中央にロータがあり、その両側にステーターが配置されています。また、整流子には切れ目があり、ロータの回転中は整流子とブラシが常に接触しているわけではありません。具体的には以下のサイクルを繰り返して連続的に回転します。
(1)整流子とブラシが接触しているとき
電流が流れてコイルに磁界が発生して片側の磁極に反発し、もう片方の磁極に引かれて回転します。
(2)整流子とブラシが接触していない時
コイルが回転して整流子の切れ目がブラシの位置に来たときは、流れていた電流が途切れてコイルの磁界が消失します。しかし、惰性によってコイルの回転は続くため、また整流子がブラシと接触するわけです。再び接触するときには、コイルに流れる電流の向きが変わります。
(1)と(2)を繰り返すことで、ブラシ付DCモーターが連続的に回転します。電流の向きを逆にすればロータの回転方向を反転することができ、電圧を調整して回転速度を制御することも可能です。回転方向の反転や、速度・トルクの制御が必要ないのなら、オンとオフを切り替えるスイッチだけで操作できます。
整流子とブラシの間に摩擦が発生するため、DCモーターの使用にともなって互いに摩耗していきます。電気接点を潤滑することは難しいですが、定期的にブラシを交換したりカーボン製ブラシを用いたりすれば、摩耗への対策が可能です。ただし、整流子が摩耗が進んで良好な接触が維持できなくなった場合にはモーターを交換する必要があります。
ブラシ付DCモーターの特性
電流に比例してトルクが大きくなる「T-I特性」と、回転数が上がるほどトルクが下がる「T-N特性」という、2つの特性を持っており、以下のような特徴があります。
- 電圧を制御すれば回転数やトルクを調整しやすいため制御性が良好である
- 起動時に最大トルクを発生できるため起動性に優れる
これらの特徴は、次に紹介する「T-I特性」と「T-N特性」によって説明できます。
T-I特性(T:トルク/I:電流)
電流が大きくなるほどトルクが大きくなります。つまり、ブラシ付DCモーターにおける電流の大きさとトルクの大きさは比例関係です。T-I特性をグラフにすると右上がりの直線となります。
T-N特性(T:トルク/N:回転数)
ブラシ付モーターのトルクと回転数は反比例します。回転数が大きくなるほどトルクは減少し、回転数が小さくなるほどトルクは増大するということです。T-N特性は右下がりの直線的なグラフを描きます。
ブラシ付きDCモーターの使用箇所で必要なトルク (規準負荷)が分かっていればS-T特性 (回転数とトルクの相関関係)から、最適なモーターを選定することができます。ただし、負荷変動が大きい場合や回転数の範囲が広い場合は、規準負荷を平均的に求めるだけでは不十分なことがあります。そのような場合には、想定される動作領域においてモーターが所定のトルクと回転数を確保できるかどうかを確認する必要があります。選定でお悩みの際はお気軽にご相談ください。
S-T特性(S:回転速度/T:トルク)
S-T特性(Speed-Torque特性)はT-N特性(Torque-Number of Revolutions)と同様に「回転数が上がるほど、トルクが下がる」という相関関係を示したグラフです。T-N特性と縦と横の軸が反対になり、X軸に回転速度、Y軸にトルクをとります。「T-N特性」が「特定の回転数時にどれぐらいトルクがでるのか」を見るのに適している一方、「S-T特性」は「特定のトルク時の回転数領域」を確認するのに適しています。くわしくはこちらで解説しています。
ブラシ付DCモーターのメリット(長所) とは?
最大のメリットは複雑な構造を持たず「制御が容易」な点と、「比較的安価」な点です。さらに起動時に最大トルクを発生できるため起動性に優れ、速度制限する際も電圧制御だけで調整しやすいことも挙げられます。
扱いやすい
複雑な構造を持たず、動作原理も単純で扱いやすいのがブラシ付DCモーターの長所です。小型のものなら乾電池で動作可能な上に、速度を制御しない場合には駆動電子回路もいりません。電流と出力トルクが比例する特性があるため、制御しやすくて出力効率も良いモーターです。
価格が安い
ブラシ付DCモーターは、シンプルな構造であることや生産量が多いことから、生産コストがそれほど高くありません。比較的安価であることから、子ども向け玩具から車載部品に至るまで幅広く採用されています。
ブラシ付DCモーターの導入時の注意点は?
主に「ブラシ」という物理的な接触部品に起因する注意点があり、「ブラシの摩耗」と「ブラシノイズの発生」の2つが挙げられます。
ブラシが摩耗する
整流子と接触してロータ側へ電流を流す構造であるため、ブラシの摩耗はどうしても避けられません。長く使用する場合には定期的な交換やメンテナンスが必要です。また、ブラシの摩擦発生によって、最大回転数が制約を受けます。
ブラシノイズが発生する
ブラシはノイズ発生源にもなります。摩擦で起こる騒音だけでなく、電流切り替えに伴った電磁ノイズも生じます。電磁的な影響を受けやすい製品にブラシ付DCモーターは不向きです。
ブラシ付とブラシレスDCモーターはどのように選定・比較したらよい?
モーターに求められる「寿命」「効率」「細かな制御の必要性」「速度と加速度」「導入コスト」を総合的に考慮して選択します。
近年は、寿命やメンテナンス性、静音性(電磁ノイズの少なさ)に優れる「ブラシレスDCモーター」の採用が精密機器などを中心に増えています。ブラシレスは名前のとおりブラシがなく、寿命やメンテナンス性、静音性などの点でブラシ付より優れているためです。電磁ノイズも抑えられることからHDDストレージやメディアドライブのような精密機器でも使われています。
一方、ブラシ付DCモーターには制御装置が不要で、製造コストが安価であるという強みがあります。モーターに求められる寿命や信頼性、細かな制御の必要性、使用頻度などを総合的に考慮して、ブラシ付かブラシレスかを選択することが重要です。どちらを選定するか迷った際はお気軽にご相談ください。