ステッピングモーターとは?原理・構造・用途を解説
ステッピングモーターは、電気信号が入力されるたびに一定角度ずつ回転するモーターです。正確な位置決めが可能で、フィードバック制御が不要なため、多くの産業機械や電子機器に採用されています。
この記事では、ステッピングモーターの基本的な仕組みや動作原理、分類ごとの特徴、用途について解説します。
ステッピングモーターの基本的な仕組みと動作原理
パルス信号とは電源のオン/オフが一定のリズムで繰り返される電気信号のことで、ステッピングモーターは1つのパルス信号に対してあらかじめ決められた角度だけ正確に回転します。
この1回分の動きを1ステップ、そのときに回転する角度を「ステップ角」と呼びます。
電気信号を物理的な「動き」へと変換する重要な役割を担っているのが、モーター内部の主要構成パーツである「ローター(回転子)」と「ステーター(固定子)」です。
内部を構成する「ローター」と「ステーター」
ローター
ローター(回転子)は、モーターの回転部分です。永久磁石や歯車状の鉄心を組み合わせたもので、ステーターが生成する磁界によって回転します。
ステーター
ステーター(固定子)は、ローターを回転させる役割を持つ部品です。複数のポール(鉄心)にコイルが巻かれており、コイルに流れる電流が切り替わることで磁極が変化し、ローターを引き寄せて回転させます。
ステッピングモーターの動作原理
ステッピングモーターは、コイルに流れる電流の切り替えによりステーターの磁極が変化し、その磁界にローターが引き寄せられることで回転します。
このとき、どのコイルに、どの順番で電流を流すかという決まりを「励磁パターン」と呼びます。励磁パターンを制御することで、ローターは一定のステップ角で回転し、正確な位置決めが可能です。
ステッピングモーターは、あらかじめ決めた励磁パターンだけで回転量を制御し、実際の位置を検出して補正しない方式(オープンループ制御)で使用できます。この方式ではエンコーダなどの位置検出装置が不要で、システム構成がシンプルになるため、コスト削減につながります。
ステッピングモーターの分類と特徴
主なステッピングモーターの分類として、相によるもの、構造によるもの、コイル励磁方式によるものがあります。
相(そう)による分類(2相・5相)
ステッピングモーターの「相」とは、ステーター内部にある独立したコイルグループの数のことです。一般的には「2相」と「5相」の2種類が主流で、この相の数によって基本のステップ角や振動の大きさが異なります。
2相ステッピングモーター
2相ステッピングモーターは2つのコイルを持つモーターで、構造がシンプルでドライバ(制御回路)が安価なことが特徴です。産業機械やプリンター、スキャナーなど、一般的な位置決め用途に標準的に使われています。
ステップ角が1.8°と比較的大きいため、より細かい位置決めが必要な場合は、マイクロステップ駆動を併用することで対応するのが一般的です。
5相ステッピングモーター
5相ステッピングモーターは5つのコイルを持ち、振動や騒音が少ないのが特徴です。
ステップ角は0.72°と2相よりも細かな位置決めが可能で、より高精度で滑らかな動きが求められる装置に適しています。特に、半導体製造装置や医療機器など、高い精度と静音性が求められる場合には欠かせません。
構造による分類(PM型・VR型・HB型)
ステッピングモーターの構造による分類は、以前はPM型とVR型の2つが主流でしたが、現在ではPM型とVR型の長所を併せ持つHB型を加えた3つとなっています。
PM型
PM(Permanent Magnet)型はローターに永久磁石を使用したタイプで、構造がシンプルでコストが低く、小型化しやすいのが特徴です。主に小型の電子機器や家電製品など、比較的低コストで位置決めが必要な用途に適しています。
低速で高トルクを発揮できますがステップ角が大きいため、家庭用プリンタの紙送りなど高精度な位置決めを必要としない用途に最適です。
PM型の構造
VR型
VR(Variable Reluctance)型は永久磁石を使用せずに、巻線電流のみでトルクを出すタイプです。かつては高速回転用途で使用されていましたが、技術の進歩により、より優れた特性を持つHB型に置き換えられています。
HB型
HB(Hybrid)型はPM型とVR型の長所を併せ持つタイプで、ローターはPM型と同様に永久磁石を使用し、構造はVR型のように細かいステップ角が可能です。産業機械や工作機械、ロボットアームなど、高精度の位置決めと高トルクが求められる用途で広く採用されています。
HB型とPM型の使い分けについて、より詳細な選定基準に関する資料はこちらからダウンロードいただけます。
見てわかる!PM型とハイブリッド型ステッピングモーターの使い分け
HB型の構造
コイル励磁方式による分類(ユニポーラ型・バイポーラ型)
ステッピングモーターをコイル励磁方式により分類すると、ユニポーラ型とバイポーラ型に分けられます。
ユニ(uni)は「1つ・片方」を意味し、バイ(bi)は「2つ・双方」を意味します。ポーラ(polar)とは電流の極性(向き)のことです。これらの名称は、コイルに流す電流の扱い方の違いを表しています。
ユニポーラ型
ユニポーラ型は一定方向の電流のみ流し、制御回路はシンプルで安価です。コイルの中央にタップ(中間端子)を設けてあり、電流の向きを切り替えずに磁極を変化させることができます。
高速域でトルクが減衰しにくい一方で、低速域ではトルクが小さくなりやすいという特徴があります。制御が簡単でコストが低いため、大量生産される小型機器などでよく採用される方式です。
バイポーラ型
バイポーラ型は双方向に電流を流し、低速域での高トルクを得られますが制御回路は複雑になります。一般的には高速域でのトルクは不得意ではありますが、近年では巻線技術やドライバ技術の進化もあり高速域でもユニポーラ型並のトルクを出力できるようになりました。
コイル全体に電流を流すため、ユニポーラ型と同じ巻線構成でも大きなトルクを発生でき、効率も高くなります。産業機械など、高いトルクが求められる用途で広く採用される方式です。
ステッピングモーターの制御システムと回転特性
ステッピングモーターは単体では動かず、周辺機器と組み合わせた「システム」として機能します。ここでは、安定した動作を実現するために必要な制御構成と、使用時に注意すべき回転特性について解説します。
ステッピングモーターの制御システム
ステッピングモーターは単体で動作させることはできず、適切な指令と電気信号を送るための制御システムが必要です。制御システムは、基本的に以下の3つで構成されます。
コントローラ
コントローラは、モーターの回転量や停止のタイミングなどの指令を行うための脳の役割を担います。昔はパルス信号が一般的でしたが、最近ではさまざまな通信規格に対応したネットワーク信号を出力しています。
ドライバ
ドライバは、コントローラからの指令を「駆動パルス信号」に変換し、モーターを回すために必要な電気(動力)を供給します。
モーター
モーターは、ドライバから送られてきた駆動パルス信号に従って正確に動作します。
トルクと回転速度の特性
ステッピングモーターは低速域で高トルクを発揮し、停止時にも保持トルクがあることが特徴です。トルクは励磁電流や制御方式、モーターの構造により変化しますが、負荷が高すぎると脱調(ステップのずれ)が発生し、制御が不安定になります。
ステッピングモーターの脱調については、下記ページの事例もご覧ください。
ステッピングモーターに位置検出機能を付加し、脱調を監視!回転速度は入力パルスの周波数に比例し、高速回転時はトルクが低下する傾向があります。共振や振動が起こりやすい速度帯が存在するため、制御方式やダンパーを活用した対策が必要です。この特性を理解することで、用途に応じた適切な制御が可能になります。
ステッピングモーターの主な用途と活用事例
正確な位置決めが得意なステッピングモーターは、私たちの身の回りの製品から産業機器まで、幅広い分野で活躍しています。代表的な活用シーンを詳しく見ていきましょう。
産業機械・特定業界分野
産業機械・特定業界の分野では、製品の搬送装置やポンプ、シリンジ部分など、「定量的な動き」を求められる用途でステッピングモーターを活用しています。例えば、3Dプリンターのノズル移動や半導体製造装置の試料ステージ、工作機械のテーブル送り、ロボットアームの関節制御などです。
この分野では、ステッピングモーターがオープンループ制御でコストを抑えつつ、高精度を実現できる点が評価されています。特に半導体製造装置では、ナノメートル単位の精度が求められるため、5相ステッピングモーターやマイクロステップ駆動を組み合わせた高精度な制御システムが使用されます。また、医療機器のシリンジポンプでは、薬液の注入量を正確に制御するために、ステッピングモーターの正確な位置決め能力が欠かせません。
家電・オフィス機器分野
ステッピングモーターは小型・軽量で低価格なため、幅広い家電製品に採用されています。プリンターの用紙送りやヘッド移動、コピー機の紙送り機構、監視カメラの首振りなど、比較的低速で高トルクが必要な用途に適しています。
また、停止時の保持トルクがあるため、電源を切っても位置が保持されるという特徴も、多くの機器に活用されるポイントです。例えばエアコンのルーバーでは、風向きを調整するためにステッピングモーターが使用されていますが、停止時にも設定した風向きが維持されます。
自動車分野
自動車分野では、スピードメーターの針を正確に動かすためにステッピングモーターが使用されています。また、ヘッドライトの自動水平調整機能や、エンジンのアイドル制御バルブといったエンジン制御システムにも欠かせない存在です。
ステッピングモーターの活用なら、ミネベアミツミにご相談を
ステッピングモーターは高精度な位置決めと速度制御が可能なモーターです。
ステッピングモーターの種類や制御方式によってトルク特性や回転速度、振動の出やすさなどが変わるため、用途や要求性能に応じて適切な種類・制御方式・仕様を選ぶことが重要になります。
ステッピングモーター選定に迷った際は、ぜひミネベアミツミにご相談ください。