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Engineer's Voice - マイクロエアポンプ

Engineer's Voiceとは

ミネベアミツミNewsletterで発信している特集コンテンツです。
当社製品をピックアップして、開発・設計担当のエンジニアに開発秘話や苦労した点など、いろいろな話を聞いていく連載形式の特集となります。

#8マイクロエアポンプ

マイクロエアポンプ

薬局や家庭等で使用する血圧計には、空気を送り込むためのマイクロエアポンプが使われています。
ミネベアミツミのマイクロエアポンプは、一人の技術者がごみ箱に捨てられていた廃材を使ってこっそりと作り始めたのが開発のスタートでした。当時を知るエンジニアに開発、そして拡販当時を振り返ってもらいました。

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血圧計
マイクロエアポンプは主に何に使う製品なのでしょうか?
血圧計です。皆さん血圧を測る時に腕を締め付けると思いますが、その締め付けるものをカフといいます。カフは腕に巻き、膨張させることで血管を圧迫し血圧を測定するのですが、このカフに空気を送り込むためのポンプとして使われています
動力源はモーターなのですよね。
はい、DCブラシ付モーターです
シャフトの回転運動を空気を圧縮して送り出すポンプの動きに変換すると……。
当初は営業が血圧計メーカー様にモーター単体のご提案に伺ったんですが、メーカー様は既にポンプ機構付きのモーターを購入されており、モーター単体で採用することは難しいということでお断りされてしまったんです
ユニットで購入されていたんですね。
メーカー様もビジネス上のメリットがないといけませんから、お断りされるのも当然ですよね。当社も当時はポンプ機構の設計や量産のノウハウがなく、ラインナップにはDCブラシ付モーター単体しかありませんでしたから、この話は一旦流れてしまいました
ミネベアミツミ厚木事業所
ミネベアミツミ厚木事業所
残念ですね……。
ところが、厚木事業所の加工センターという部署のあるメンバーがこの話を聞いて、個人的にごみ箱から廃材を拾ってきて削ったりして、色々とポンプモーターの試行錯誤を始めたんです
ごみ箱から!
加工センターは社内の支援部門という位置付けで、金型製作・成形部品・プレス部品加工を請負っており、切削加工機等が揃っていましたので、試作品を作る環境が整っていたというのもあったかもしれません。ただ、ビジネスとして成り立つかはまだ分かりませんでしたから、こっそりと作っていたようです。もちろん、周りのメンバーは知っていましたけど
いくら環境が整っていたとはいえ、開発には費用がかかるのでは?
そうですね。ここからは社内政治も絡んできますので、経緯の詳細は割愛しますが……。最終的には、当時のミツミ電機社長がこの製品は広く販促するためには自社で費用を負担してでも開発を進めるべきという判断をしました。開発が正式決定してからは、お客様へのヒアリングの場に加工センターの技術者、モーター技術販促担当者、営業メンバーが同席し、その場で浮かんだモーター特性や製品形状の改善案のアイデアをすぐに試作に反映させ、1週間程度でお客様にサンプルを納入し検討いただくというサイクルを繰り返しました。試作までを社内で完結できる加工センターとモーター部門だからこそ短期間での試作を実現できたのだと思います
マイクロエアポンプの構造
マイクロエアポンプの構造
個人的にごみ箱から拾った廃材でこっそりと作っていた製品が、会社を挙げての一大プロジェクトに成長したんですね。
最初に営業がDCブラシ付モーター単体を提案に行ってからは4年ほどが経っていたでしょうか。どうにか設計と試作が完了し、メーカー様からご注文も頂けたのですが、ここで大きな問題が発生しまして……
なんでしょうか?
加工センターというのは、先程申し上げましたように金型や成形部品、プレス部品を作ることは得意なのですが、製造については全くノウハウがなかったんです。つまり、設計を行い、サンプルを作ることはできても、設計通りの製品を大量に作ることができなかった。けれども、お客様からはご注文も頂いていますし、今更「作れません」などとは言えませんから……急遽製造支援部門に入ってもらい、厚木事業所内にラインを引き、なんとか無事に納入を開始することができました
そうなると拡販にも期待がかかりますね。
当社は血圧計市場では実績のない新参でしたので、最初の反応は芳しくありませんでした。それでも訪問を繰り返しているうちに少しずつフィードバックをいただけるようになり、お応えしていく中でご採用いただくことも増えていきました
ここまで数が増えると想像されていましたか?
最初は門前払いでしたからね……とてもそんな想像はできませんでした
最後に、今後の目標や豊富を教えてください。
マイクロエアポンプは社内外の多くの方々が関わって完成した製品ですが、元々は一人の技術者がごみ箱の中の廃材から作り出しました。実現は難しいだろうと誰もが思っていたことであっても、諦めずにこつこつと作り続けていた情熱が会社を動かし、お客様を動かすことに繋がったんだと思います。こうした情熱を受け継いで、私達もまたEngineer's Voiceに取り上げられるような画期的な製品を開発したいですね

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マイクロエアポンプ
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