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Engineer's Voice - 世界最小ボールベアリング

Engineer's Voiceとは

ミネベアミツミNewsletterで発信している特集コンテンツです。
当社製品をピックアップして、開発・設計担当のエンジニアに開発秘話や苦労した点など、いろいろな話を聞いていく連載形式の特集となります。

#10世界最小ボールベアリング

世界最小ボールベアリング

2009年に販売を開始したミネベアミツミの量産可能な世界最小サイズのボールベアリング、「DDL-004」。
今回は、外径がわずか1.5mmと、“米粒よりも小さい”この世界最小ボールベアリングの組立を、2006年の立ち上げから担当し、量産化を実現した職人に開発当時の話を聞いてみました。
※ミネベアミツミ調べ

製品化まで3年とのことですが、最も時間がかかったのはどの工程になるのでしょうか。
部品の切削、研削ですね。特に内外輪の溝の研磨は砥石も専用のものを作っていますので、最も時間がかかったのではないでしょうか。組立は部品工程から初回品が上がってきて、組み立てられますか?というところからスタートしました。最初は加工や組付け精度がいまいちで回転しないものもあったのですが、そこから半年くらいで量産化できるまでになりました。量産が確立するまでに試作品を相当数作ったと思います
組立を一人で担当されていたんですね。
最初は一人ではなかったんです。ただ、部品が非常に小さいので扱いが難しく、部品がよく見えないために紛失してしまうことなどありまして……(笑)。ギブアップしてしまう人も多くいました。若手も経験が浅くうまく組み上げられなかったりして、気が付いたら一人になっていました
DDL-004構成部品
シャープペンシルの芯とのサイズ比較。
左から外輪、内輪、ボール(6個)、リテーナ。
ちょっと、部品が小さすぎて作業が想像できないのですが……なくしたりしないんでしょうか。
正直、なくしますね……。組立はクリーンルームで行っているのですが、ボールだけでなくすべての部品がとても小さくて軽いので、ドライの状態であれば人が動いた時に起こるほんの僅かな風圧でも飛んでいってしまいます……。それから、静電気がおきてしまうともう大変……一度なくすと絶対に見つかりません
組立はすべて手作業なのですか?
はい。内輪、外輪をセットしてボールを入れ位置を整える、リテーナを挿入するなど、すべて手作業で行っています。リテーナを入れる際は顕微鏡を使っていましたが、それ以外は肉眼でしたね。現在は電子拡大鏡も導入され効率よく作業できているようになりました

リテーナ:保持器とも呼び、玉を等間隔に保つ役割を果たしている部品。詳細はこちら

DDL-004組立ステップ
ボールを入れている実際の様子。内輪を片側に寄せ、
隙間に玉を6個入れてから内輪と玉の位置を調整する。
ボールはどのように入れているのでしょうか。
ピンやピンセットで内外輪の溝に入れています。ただ、ボールも他の部品も非常に小さいので、市販のピンセットではそのまま使えず、小型グラインダーでピンセットの先端を細く成形して使っているのですが、ちょっとした力加減で曲がってしまいます。最初の頃は力加減が分からず、先端を折ってしまったこともありました
極めて繊細な作業が求められそうです。長時間集中力を維持する秘訣はありますか?
これまでにない製品にチャレンジできることが楽しく、集中力を維持しなければ……という感覚ではなかったです。肩が凝るのも忘れるくらいで(笑)。最初は治具も組み台もないところから始めたのですが、治具も自分の意見も取り入れてもらいながら次第に良いものができてきまして、試行錯誤しながら徐々に早く作れるようになるのが面白かったですね
DDL-004組立完了
リテーナを嵌め完成した状態。
一番楽しい工程はなんでしょう?
ボールを入れてからリテーナを挿入するところですね。世界最小ボールベアリングにはボールを6個入れていて、それらを均等間隔で配置するのですが、位置がずれているとリテーナを嵌めた時にボールに傷がついたりやリテーナが変形してしまうなどの不具合の原因となってしまいますので、位置は正確に合わせなければなりません。ボールの位置はセパレーターを使うことはできないため目算で揃えているのですが、一発でボール6個をぴったり位置決めしたところにリテーナがバチッと嵌まると『仕留めた!』って気分になります
1個作るのにどれくらい時間がかかるのですか?
最初から最後まで一気に組み立てるわけではなく工程ごとにまとめて作業していますので、正確なところは分からないですね。内外輪の溝計測、内外輪をセット、ボール入れ、リテーナを嵌める、寸法測定、回転検査、パッキングなど10工程ほどありますが、内外輪をセット、ボール入れ、リテーナ入れの部分だけですと、1分未満でできていると思います。今は組み立て担当のできる若いメンバーの力量が増していますので、若さがある分もう少し多く作れるかもしれません
DDL-004完成品梱包
最後の工程のパッキングの様子。
改めて、開発当時を振り返ってみていかがでしょうか。
このサイズのボールベアリングの量産化が実現できたのは、設計はもとより切削や研削のベテラン勢の知恵や努力があったからこそだと思っています。関係者の努力で世界最小ボールベアリングの量産化が実現できたように、精密への情熱を持ち続ける『ミネベアミツミイズム』をこれからも継承していってほしいですね

今回ご紹介した製品はこちら

世界最小ボールベアリング
世界最小ボールベアリング
外輪、内輪、ボール、リテーナ(ボール保持器)、シールド(フタ)、スナップリング(バネ)などにより構成される機械加工部品であり、当社では外径35mm以下の小型サイズの製品を生産、販売しています。高精度が要求される回転機器などの軸を安定的に回転させるために、軸を受ける部分に使用される精密部品です。
※本記事で紹介している世界最小ボールベアリングの「DDL-004」のスペックは当サイトには掲載しておりません。詳細はお問い合わせください。
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