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Engineer's Voice - 高精度測位用GNSSアンテナ

#2高精度測位用GNSSアンテナ

センチメートル単位の正確な測位には「GNSSアンテナ」と呼ばれる受信用アンテナが使われています。
しかし、移動体に搭載するためのアンテナの性能の確保と小型化の実現には様々な困難がありました。
自動車やバスの自動運転、ドローンの飛行、農機の自走などへの活躍が期待される当社の高精度測位用GNSSアンテナについて、
実際に開発を担ったエンジニアに色々と聞いてみましょう。

GNSSって何ですか?
GNSSとは、衛星測位システム(Global Navigation Satellite System)のことです。GNSS衛星にはGPS(アメリカ)、Galileo(欧州)、GLONASS(ロシア)、QZSS(日本)などがあります。それぞれの衛星から発信された電波がアンテナに届くまでの時間を測定することで衛星からアンテナまでの距離がわかり、複数の衛星からの距離を演算することで、アンテナの位置を算出することができます。GNSS衛星の電波を受信することができるアンテナのことをGNSSアンテナといいます。GPSという言葉は聞いたことがありますか?
はい。スマートフォンでも使われていますよね。
GPSはアメリカが運用する衛星測位システムで、GNSSを構成するシステムの一つです。スマートフォンも機種によってはGPS以外の電波を受信しているものもあります。しかし、電波は対流圏や電離層の通過、衛星が地平線に近い、周囲にビルなどの障害物があるなどの条件によって遅延し、位置の誤差が数十メートルから百メートルほどとなることがあります
位置の精度を上げるためにはどうすれば良いのでしょうか?
まず一つに、受信する周波数帯域を増やすという方法があります。例えば、GPSアンテナは主にL1帯(1575.42MHz)を受信していますが、他にもGNSS衛星はL2帯(1227.60MHz)やL5帯(1176.45MHz)などの電波を発信しています。これらの広い帯域を受信することで位置の精度を向上させることができます

中心周波数公称値

図1 GNSS送信信号周波数分布
図1 GNSS送信信号周波数分布
測位信号の周波数をプロットしたイメージ(クリックで拡大します)
図2 高精度測位用GNSSアンテナ
図2 高精度測位用GNSSアンテナ
ミネベアミツミ製
図3 みちびき位置イメージ
図3 みちびき位置イメージ
常に日本のほぼ真上に位置するため
位置の誤差が少ない
もう一つ、準天頂衛星システム『みちびき』の電波を併用する方法もあります。みちびきはL6帯(1278.75MHz)の電波を、準天頂軌道、つまり常に日本のほぼ真上から電波を発信しているため、特に山間部や都市部などで障害物の影響を受けづらく、誤差を十数センチ以下に抑えることができます。当社の高精度測位用GNSSアンテナもみちびきの電波を受信しています
具体的にはどのようなところで活用されているのですか?
自動運転で高精度の測位が必要となる自動車で採用をいただいています。開発当時は車載用の高精度測位用GNSSアンテナが他になかったため、仕様を私達で作るところから開発を始めました
世の中にないものを作るというのは、大変そうですが……。
数センチメートルの高精度を得るためには、一般的にアンテナサイズは10センチを超える大型化が必要です。小型化するには、材料に適切なものを使用すれば可能ですが、単純に小さくすると、電波の受信レベルが下がって位置精度が落ちてしまうのです。しかし、自動運転に必要な精度や、これくらいのサイズならこれくらいの精度が出る、というノウハウがなかったため、いくつものサンプルを作り最適なサイズを探っていきました。また、お客様のデザインに収める必要もありますので、設計はコンマ数ミリの戦いでもありました
小型化はどのように実現したのでしょうか?
アンテナの性能は、基板の材料によって左右されます。例えば誘電率は重要な要素のひとつですが、他にも影響する要素があります。それらの最適な組み合わせと、コストや量産性までトータルで検討を重ね、シミュレーションと実験を繰り返して小型化を実現しています
アンテナの評価はどのように行ったのでしょうか。
自動車に試作品のアンテナを載せ、実際に社員が日本やアメリカの道路を何度も走ってテストを行いました。ところが、量産開始直前に位置測位しない場所があるとの報告が入り……実は、すぐ近くに携帯電話の基地局があり、その強い電波が干渉することが原因だったのです。急遽、回路の最適化を行い走行試験を繰り返して、なんとか量産に間に合わせることができました。長期間に渡る開発でしたが、間違いなくこれが最大の山場でした……
今後の展開を教えてください。
最近では、農機の自動操舵用として採用をいただきました。農地は領域があらかじめ決まっており、この範囲の中で効率良く作業を行うために真っ直ぐ走行する必要があります。GNSSの電波を用いることで、正確な自動操舵を実現できました。このように、高精度測位用GNSSアンテナは正確な位置の測位が求められるアプリケーションに活用できます。他にも通信ネットワーク、デジタルテレビ放送などに必要となる高精度な時刻同期にも使用されております。現在、私たちは幅広い分野のお客様に高精度測位用GNSSアンテナをご提案しておりますので、ぜひご検討を頂けますと幸いです

今回ご紹介した製品はこちら

高精度測位用GNSSアンテナ
高精度測位用GNSSアンテナ
複数の信号(L1/L2またはL1/L2/L6)を高感度に受信する小型アンテナです。高精度測位では衛星からの複数の信号、GNSSのL1/L2信号にL6(みちびき)の補強データ、またはGNSSのL1/L2信号にネットワークRTKの補強データを加えて、センチメートル級精度を実現します。
詳しくはこちら

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