金型内圧センサーとは? 製造現場での使用効果や目的、仕組みを解説
金型内圧センサーとは?
製造現場での使用効果や目的、仕組みを解説

金型内圧センサーとは、工業製品の製造の現場で、金型内に充填される樹脂または金属の圧力を測定するデバイスです。ミネベアミツミは、金型内圧センサーを核とした金型センシング統合システムを展開しています。
このシステムは、成形品の品質に直結する重要なパラメータである「型内圧波形」と「型内キャビティ温度波形」を、簡便かつ低コストで測定、管理、記録できます。これらの波形は、従来の技術では測定が困難でしたが、このシステムによって可視化できるようになりました。
この記事では、金型内圧センサーの使用効果や目的、センサーの仕組みについて解説します。
1. 金型内部の圧力を測定する金型内圧センサー
金型内圧センサーは、金型の内部に取り付け、金型内に充填される樹脂または金属の圧力変化を測定するセンサーです。ミネベアミツミの金型内圧センサーは、エジェクターピンと呼ばれる部品の底部に取り付け、金型内に充填される樹脂または金属の圧力変化をリアルタイムで正確に計測可能です。
これまでは技術者の経験と勘に頼っていた金型内の圧力調整を、データにより判断することができます。

金型内圧センサーを含む金型センシング統合システム
ミネベアミツミの金型センシング統合システムは、金型内圧センサーによって金型内の樹脂圧力を測定、または金型内圧センサーと金型キャビティ温度センサーによって金型内の樹脂圧力と金型キャビティの温度変化を同時に測定できるシステムです。
金型キャビティ温度センサーはキャビティ(金型の凹側の部分のこと)の近傍に取り付けて使用し、金型内の温度変化を測定します。
2. 射出成形における金型内圧センサーの効果
金型内圧センサーは、金型を使って製品を成形する工程に欠かせません。金型を使う成形の代表的なものは、射出成形です。
射出成形は、プラスチックなどの樹脂原料や金属原料などを高温で溶かし、それを金型内部に射出して、製品を成形する方法です。金型の中で原料が冷えてから、エジェクターピンなどを使って型から外します。
このような射出成形の工程では、金型内圧センサーと金型キャビティ温度センサーが重要な役割を果たします。
原料を加熱して金型内に射出し、冷却して製品を成形する際に、これらのセンサーがあることで安定性と品質の確保が可能です。

3. 金型内圧センサーを使用する目的
金型内圧センサーの使用目的は多岐にわたります。ここでは、金型内圧センサーがどのような目的で使用されているかを解説します。
不良品の防止
金型内圧センサーは、「ショートモールド」や「バリ」がある不良品の防止に有用です。
ショートモールドとは、成形品が部分的に欠けていたり、不完全な形に出来上がったりすることです。射出している樹脂などが流動中に失速してしまうと、金型全体に行き渡らず、欠けがある不良品となります。
バリとは、金型の隙間から材料が漏れ出てできてしまった、余計な部分のことです。バリは、ショートモールドとは反対に、圧力が過剰になることで発生します。
金型内圧センサーを導入することで、材料の流動が適切かをリアルタイムで確認でき、これらの不良品の発生を防止することが可能です。
キャビティ間の成形品質を定量化
キャビティ間の成形品質を定量化するためにも、金型内圧センサーは役立ちます。
金型を図面どおりに製作しても、さまざまな要因でキャビティ間に差異が生じてしまうと、成形品の品質がばらつきかねません。
金型内圧センサーを導入すればキャビティ間の内圧波形を定量化でき、内圧を合わせて各キャビティの重量・寸法を近似させるのに役立ちます。その結果、均一で安定した製品品質を実現することができるのです。
成形条件の再現
金型内圧センサーは、成形条件を再現する目的でも使用されます。
成形条件とは、原料を流す速度や圧力といった、製品を成形する際の条件のことです。まず試作工場で成形条件を出し、量産工場へ金型を移管して、試作工場で取得した成形条件を使って本格的な製造を開始することがありますが、良品の成形品ができない場合もあります。
そこで、金型内圧センサーを導入し、試作工場で取得した基準内圧波形に合わせて量産工場での成形条件を調整することで、条件の再現が容易になるのです。
トレーサビリティ・ログ取得
金型内圧センサーを使用することで、トレーサビリティ・ログ取得が可能になります。
従来は、射出成形の現場で定量的な品質記録を残すことは難しいとされてきましたが、現在は低コストで測定、管理、記録が可能になりました。
全量産品の内圧や温度波形を定量的に保管、管理することで、品質が「見える化」され、問題発生時の原因究明や品質管理の向上につながります。
4. 金型内圧センサーの種類と仕組み
金型内圧センサーの基本的な働きは、金型内部で発生する圧力変化を検出し、センサーを介して測定するというものです。ここでは、金型内圧センサーの種類と仕組みについて解説します。
ひずみゲージ式センサー
ひずみゲージ式センサーは、物体のひずみを測定することで圧力を計測する金型内圧センサーです。耐久性が高く、大型の金型への使用や長時間の使用に適しています。コストパフォーマンスにも優れており、比較的導入しやすい製品といえるでしょう。
ひずみゲージは、ベースとなる電気絶縁物の上に金属箔の抵抗体を貼り付けて、シリコンなどでコーティングした構造です。ベースに力がかかり伸び縮みすると、金属箔の抵抗体も比例して伸縮しますが、この抵抗値の変化を測定することで、圧力などを検出できます。
ミネベアミツミの金型内圧センサーはひずみゲージ式を採用しており、1つのセンサーに4枚のひずみゲージを貼り付けることで、測定の正確性が高いホイートストンブリッジ回路を形成しています。温度特性にも優れ、低圧でも正確に測定でき、高感度で長い寿命を実現しているのが特徴です。

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ピエゾセンサー(圧電センサー)
ピエゾセンサー(圧電センサー)は、ピエゾ効果を利用して、ひずみやゆがみを感知する金型内圧センサーです。ピエゾ効果とは、水晶などの特定の物質に圧力を加えると電荷が発生する現象のことで、圧電効果ともいいます。
ピエゾセンサーは、2組の水晶板に電極箔を挟み込んだ構成が一般的。水晶のピエゾ効果を利用して圧力を電気信号に変換し、計測することで金型内の圧力変動をリアルタイムで確認できます。
高精度かつ応答性が高く、短時間で変動する圧力も高精度に計測可能であることが特徴です。射出成形やプレス成形など、高速で精密な圧力測定が必要な製造プロセスで、広く使用されています。
5. 金型内圧センサーの導入をお考えなら、ミネベアミツミにご相談を
金型内圧センサーは、射出成形やプレス成形、圧延などの製造プロセスにおいて重要な役割を果たします。金型内圧センサーの導入により、不良品の防止や品質の安定化が可能となり、コスト削減にもつながるでしょう。
ミネベアミツミの金型センシング総合システムは、独自技術の4ゲージ方式で成形品の高品質化とセンサーの長寿命化を実現しています。導入により、検査工程の工数とコストを削減した事例もあります。
金型内圧センサーの導入をお考えなら、お気軽にミネベアミツミにご相談ください。
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