ベアリングの種類
ベアリングはさまざまな場面で活用されるため、大きさや素材、形状などが異なる数多くの種類が開発されています。そのため、ベアリングを検討する際には、種類ごとの性質や特徴をきちんと捉えておくことが重要です。本記事では、構造や荷重によって細かく分類されるベアリングの種類について解説します。また、深溝玉軸受やアンギュラ玉軸受など、よく使用される代表的なベアリングの特徴や主な用途についても紹介します。
転がり軸受とすべり軸受
ベアリングの用途は多岐にわたるため、さまざまな種類のベアリングが存在します。ベアリングは、まず構成部品のひとつである転動体の有無で「転がり軸受」と「すべり軸受」に分類されます。さらに「転がり軸受」は転動体に「玉」を使っているか「ころ」を使っているかで「玉軸受」と「ころ軸受」に分類されます。
また、「すべり軸受」にもさまざまな種類が存在し、形状・構造や潤滑剤の有無などによって細かく分類されます。主な種類としては、すべる部分が丸みを帯びた球面で自動的に傾いて荷重を受けることができる「球面すべり軸受」、軸の回転によって発生する圧力が軸と面の間に油膜を形成し、滑らかな回転を実現させる「流体動圧軸受」、外部の機器や設備から油を供給し、油膜を作ることで滑らかな回転を実現させる「静圧軸受」などがあります。
ラジアル軸受とスラスト軸受
ベアリングの分類において、重要なのが「作用する荷重の方向」です。0°以上45°以下の呼び接触角をもち、主に回転軸に対して垂直に荷重がかかる場合を「ラジアル荷重」、45°を超え90°以下の呼び接触角をもち、主に回転軸と同じ方向に荷重がかかる場合を「アキシアル荷重」と呼びます。同じ形状のベアリングでも、ラジアル荷重とアキシアル荷重のそれぞれに対応した製品が作られており、ラジアル荷重を支持するベアリングを「ラジアル軸受」、アキシアル荷重を支持するベアリングを「スラスト軸受」と呼びます。なお、ラジアル軸受はラジアル・アキシアル両方の荷重に耐えることが可能です。
たとえば玉軸受の場合、まず「ラジアル玉軸受」と「スラスト玉軸受」に分類されます。そこからラジアル玉軸受は深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受、自動調心玉軸受に、スラスト玉軸受はスラストアンギュラ玉軸受にそれぞれ細分化されます。
細かなベアリングの種類は、分類表で確認できます。
主なベアリングの種類と特徴
多種多様なベアリングの中でも特によく使用されるのが「転がり軸受」です。ここでは、転がり軸受の中でもラジアル荷重に作用する「ラジアル玉軸受」「ラジアルころ軸受」について、それぞれ代表的なベアリングを紹介します。
ラジアル玉軸受の代表的なベアリング
【深溝玉軸受】
「深溝玉軸受」は内輪・外輪とも軌道に深い溝があり、その溝に転動体である玉が並べられたベアリングです。転がり軸受の中で最も多く使用されている一般的なタイプです。大きな荷重には不向きですが、ラジアル荷重だけでなく両方向のスラスト荷重も受けることができ、広い寸法範囲をもつ汎用性の高さが魅力です。摩擦トルクが小さく、高速回転でも使用でき、低騒音・低振動のため作動音を抑えたい製品などにも適しています。
ベアリングの両側が開いた「開放形(オープンタイプ)」、グリースを密封した「シールド・シール形」、止め輪を利用して軸方向に位置決めできる「止め輪付き」などがあります。また、 通常呼び内径が10mm未満かつ呼び外径が9mm以上のものを「小径ベアリング」、呼び外径が9mm未満のものを「ミニチュアベアリング」 と呼び、それぞれ目的によって使い分けられています。
- 主な用途
- 電動機、家電製品、OA機器、ファンモーター、計器類、建築機械、鉄道車両、農業機械、減速装置、各産業機械など
- <ミネベアミツミの製品例>
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- ラジアル深溝玉軸受(フランジ無し)
- ラジアル深溝玉軸受(フランジ付き)
- ラジアル深溝玉軸受(止め輪付き)
【アンギュラ玉軸受】
「アンギュラ玉軸受」は、玉と内輪・外輪との接点を結ぶ直線がラジアル方向に対して接触角をもつベアリングです。高速回転・高精度回転を必要とする用途に適しています。ラジアル荷重と一方向のスラスト荷重を負荷できる「単列タイプ」、ラジアル荷重と両方向のスラスト荷重を負荷できる「複列タイプ」などがあります。接触角は15°・25°・30°・40°などがあり、接触角が大きくなるほどスラスト荷重の負荷能力は大きくなりますが、高速回転には不利になります。
- 主な用途
- 単列タイプ:工作機械主軸、ガスタービン、遠心分離器など
- 複列タイプ:油圧ポンプ、エアコンプレッサ、各種変速機など
【自動調心玉軸受】
「自動調心玉軸受」は、軸受内に玉が2列並びになっているのが大きな特徴です。軸芯が傾いた状態でも回転できるため、軸がたわみやすい機械や、軸と芯合わせのハウジングが難しい場合などに用いられます。ただし、スラスト荷重の負荷能力はそれほど高くなく、汎用的な利用には不向きです。
- 主な用途
- 減速機 、木工機械、紡績機械の伝導軸など
ラジアルころ軸受の代表的なベアリング
【円筒ころ軸受】
「円筒ころ軸受」は、ころと軌道面が線接触しているベアリングです。転動体と内輪・外輪のつばとの摩擦が小さいため、高速回転に適しています。分離形であるため、取付け・取外しが比較的しやすいのも特徴です。ころの列数により、単列・複列・四列などがあり、複列の円筒ころ軸受はラジアル荷重に対する高剛性を備えています。
- 主な用途
- 産業機械、減速機、鉄道用車軸、航空機など
【針状ころ軸受】
「針状ころ軸受」は、針状のころ(直径6mm以下、長さが直径の3~10倍のころ)を用いたベアリングで、ニードルベアリングとも呼ばれます。 小さいスペースで大きな定格荷重をもち、剛性も高いのが特徴です。ころの本数も多いため、揺動運動にも適しています。断面高さが小さく、機械装置の小型・軽量化に役立ちます。
- 主な用途
- 自動車エンジン、トランスミッション、航空宇宙機器など
【円すいころ軸受】
「円すいころ軸受」は、内輪・外輪の軌道面、ころの円すい頂点が軸受の中心線上の一点で交わるように設計されたベアリングです。ラジアル荷重とスラスト荷重を支持できます。荷重が作用すると軸受内部に軸方向分力が生じるため、一般的には2個以上もしくは複列で使用します。
- 主な用途
- 自動車のホイールハブ、ギアボックス、建設機械、鉄道用減速機など