アクチュエーターとは、スマートフォンや自動車、産業用ロボットなど、身の回りにあるさまざまな機械の「動き」を支える装置です。
この記事では、アクチュエーターの役割と仕組みに加え、電動(電磁)式・油圧式・空気式といった種類ごとの特徴、どのような分野で活用されているかを解説します。
1. アクチュエーターの役割と仕組み
アクチュエーターは、電気、空気、油圧などによって得られるエネルギーを、物理的な「動き」へと変換する装置の総称です。ここでは、アクチュエーターが果たす主な役割と、エネルギーを動きに変える仕組みについて解説します。
アクチュエーターの主な役割
産業用機械やロボット、医療機器、家電製品などの駆動源として、アクチュエーターは欠かせません。 アクチュエーターは、現代社会のあらゆる場面において、機械を実際に動かす「筋肉」のような役割を担っています。
アクチュエーターは、一方向への「直線運動」、回転し続ける「回転運動」、一定の範囲で往復する「揺動運動」といった運動を生み出すことができ、用途や目的に応じて最適なものが選定されます。
アクチュエーターの基本的な仕組み
アクチュエーターがエネルギーを動きに変換するプロセスは、主に「入力部」「駆動機構」「伝達・変換機構」の3つの要素で構成されています。
■ アクチュエーターの3つの要素
入力部
駆動機構
伝達・変換機構
これらの要素の組み合わせにより、アクチュエーターが生み出す制御性、動作速度、発生させる力の強さが決まります。
■ アクチュエーターがエネルギーを動きに変換するプロセス(イメージ)
2. アクチュエーターの歴史と技術の進化
古代から、人類は水車や風車といった自然エネルギーを動力に変換する技術を生み出してきました。これらはアクチュエーターの原型と見ることもできます。
産業革命以降は、蒸気機関や内燃機関の発展に伴い、エネルギーを動力に変換するさまざまな機構が開発されました。20世紀に入ると、高い出力を得られる油圧式や空気式のアクチュエーターが産業分野で普及し始めます。さらに20世紀後半からは、エレクトロニクスの進化によって電動(電磁)式アクチュエーターの応用範囲が飛躍的に拡大しました。
現在では、小型モーターのさらなる高性能化により、ロボットや家電、自動車など、精密な制御が求められるあらゆる分野で電動(電磁)式アクチュエーターが不可欠な存在となっています。
3. アクチュエーターの種類とそれぞれの特徴
現在、産業界や日常生活で利用されているアクチュエーターは、電動(電磁)式、油圧式、空気式、ピエゾ式の4つが代表的です。それぞれの駆動原理や特徴について見ていきましょう。
電動(電磁)式アクチュエーター
電動(電磁)式アクチュエーターは、入力された電気信号を磁場(磁力)へと変換し、その磁界内で生じる力を利用してモーター等を駆動させる方式(電磁駆動)です。
基本原理としては「フレミングの左手の法則」にもとづいており、機構の違いによって以下のような種類に分けられます。
■ モーターなどを活用した一般的な機構
このタイプは、位置決めや速度の制御を高精度に行えるのが特徴です。また、多点停止や複雑な動作プログラミングが可能で、自動化ラインやIoT機器に適しています。油圧式に比べると最大推力は劣る場合がありますが、エネルギー効率に優れています。
■ 共振デバイス(LRA:Linear Resonant Actuator)
この繊細な振動表現により、スマートフォンのハプティクス(触覚フィードバック)をはじめ、リアルな操作感を実現するキーデバイスとして幅広い分野で活用されています。
油圧式アクチュエーター
油圧式アクチュエーターは、電動ポンプで油(作動油)に高い圧力をかけ、その圧力をシリンダーやモーターに伝えて駆動させる方式です。液体がほとんど圧縮されない性質を利用し、油を圧力伝達の媒体として機能させます。
油圧式アクチュエーターは大きな力を出すことができるため、建設機械や大型プレス機などに適しています。一方で、配管設備が必要で装置が大型化しやすい点や、油漏れのリスク、定期的なフルード(機構内の油)交換などメンテナンスの手間がかかることに注意が必要です。
空気式アクチュエーター
空気式アクチュエーターは、コンプレッサーで圧縮した空気圧をエネルギー源とし、エアシリンダーなどを動かす方式です。
空気式アクチュエーターには、構造が単純で安価、かつ軽量というメリットがあります。さらに、動作スピードが速く、万が一過負荷がかかっても安全に停止しやすいため、扱いやすいこともメリットといえるでしょう。 ただし、空気には「圧縮される」性質があるため、途中でピタリと止めるような精密な位置決め制御は苦手です。また、エネルギー効率は電動(電磁)式や油圧式に劣る傾向があります。
ピエゾ式アクチュエーター
ピエゾ式アクチュエーターは、圧電素子(ピエゾ素子)に電圧を加えることで素材自体がひずむ性質(圧電効果)を利用し、微小な変位や精密な振動を発生させる方式です。
ピエゾ式アクチュエーターは、高速応答とナノメートル単位の微細な位置決めが可能なことから、精密な動作を得意とします。その一方で、1回の動作で動ける距離(ストローク)が短いため、大きく動かす用途には向きません。
4. アクチュエーターが使用される分野
アクチュエーターは多種多様な分野で活用されています。ここでは、代表的な4つの分野における具体的な使用例を見ていきましょう。
自動車分野
現代の自動車は「走るアクチュエーターの塊」とも言えるほど、多くの駆動部をアクチュエーターに頼っています。ブレーキ制御やワイパーなど、自動車の安全性に関わる部分にはもちろん、パワーウィンドウ、ドアミラーの折りたたみ機構、電気式サンルーフの開閉など、快適性を支える部分に電動(電磁)式アクチュエーターが使用されています。
産業用機械・製造分野
工場の自動化(FA)やロボットの分野では、用途に合わせて電動(電磁)式アクチュエーターと空気式アクチュエーターが使い分けられています。
ロボットの関節駆動や工作機械の精密な位置決めなど、高い精度が重視される工程には、制御性の高い電動(電磁)式アクチュエーターが使用されます。一方で、圧入作業や高速な移動、重量物の搬送、部品のクランプ(固定)などの場面では、用途に応じて空気式アクチュエーターや、油圧式アクチュエーターが選ばれます。
医療機器・精密機器分野
医療機器や精密機器は、制御性の高さとクリーンな環境で使用できることが必須条件です。この分野では、主にピエゾ式アクチュエーターと電動(電磁)式アクチュエーターが活用されています。
手術用ロボットの精密な動作や、ナノメートル単位の制御が必要な半導体製造装置、インクジェットプリンターのヘッドなどに使われているのは、応答性に優れたピエゾ式アクチュエーターです。
患者用リフトの昇降制御や、MRI・CTスキャンのテーブル移動といった、比較的大きな荷重を精密に動かす機構には、エネルギー効率に優れた一方で制御性も高い電動(電磁)式アクチュエーターが使われています。
建築・住宅分野
巨大な建設現場から身近な住まいまで、建築・住宅分野でもアクチュエーターは欠かせない存在です。
強大なパワーを必要とする建設機械や、航空機のフラップ(補助翼)などの制御システムには、高い出力を誇る油圧式アクチュエーターが採用されています。
住宅分野では、窓や避難口の自動開閉といったスマートホーム機能に電動(電磁)式アクチュエーターが使われ、省エネやバリアフリー化、安全性の向上に貢献しています。
5. ミネベアミツミのアクチュエーター関連製品のご紹介
ミネベアミツミでは、電動(電磁)式アクチュエーターの領域において、長年培った超精密機械加工技術とエレクトロニクス技術を融合させた製品ラインアップを展開しています。
高精度な制御を実現する「ステッピングモーター」
当社のステッピングモーターは、パルス信号に同期して正確に動作し、OA機器や産業機器の精密な位置決め制御に大きく貢献します。
繊細な感触を伝える「レゾナントデバイス(LRA)」
当社の共振デバイスは、微細な振動表現を可能にし、スマートフォンのハプティクス(触覚フィードバック)をはじめ、リアルな操作感を実現します。
お客様の用途に合わせた最適なソリューションをご提案いたしますので、ぜひミネベアミツミにご相談ください。