異物混入対策として必要な検査とは?食品製造の工程に沿って解説

異物混入は食品業界において深刻な問題であり、企業や製品のブランドイメージの悪化に直結する重大な課題です。食品について東京都に寄せられる苦情件数の2位が異物混入であり、2022年度には565件の事例があったと報告されています。混入の対象としては、調理済み食品や加工食品、菓子類が多くを占めました。
近年では、加工食品に異物が混入していた事例がSNSで拡散されることもあり、異物混入は企業イメージの失墜に直結します。
このような状況下では、食品製造業者にとって異物混入対策は、重要な課題のひとつです。この記事では、異物とはどのようなものか紹介するとともに、混入の原因と製造工程に沿った具体的な対策を解説します。
異物とは、本来入っているはずのないもの
異物とは、食品などに本来含まれるべきではない物質のことを指します。東京都によると、食品の異物の分類と内容は、下記のとおりです。
■食品の異物の分類と内容
異物の種類 |
内容 |
---|---|
虫 | ハエ、ゴキブリ、虫卵・幼虫・さなぎなど |
寄生虫 | アニサキスなど |
鉱物性異物 | ガラス、石・砂、金属など |
動物性異物 | 人毛(毛髪等)、獣毛、人の歯(歯科治療材を含む)など |
合成樹脂類 | ビニール類、ゴムなど |
その他 | 紙、繊維、たばこ、絆創膏、食品の一部など |
これらの異物は、単に不快感を与えるだけでなく、健康被害をもたらす可能性もあります。例えば、硬質な異物は口腔内や消化器官を傷つけるおそれがあり、虫や寄生虫は食中毒の原因となるかもしれません。
そのため、食品製造の現場には、異物混入対策が欠かせないのです。
各工程での異物混入例
異物混入はどの工程でも起こりうるため、十分なチェックが必要です。ここでは、各工程での異物混入の例を解説します。
原料への異物混入
食品原料に虫が入っていたり、農産物に石や砂が付着していたりといったように、原料に異物が混入している場合があります。このような異物混入を防ぐためには、原料の受け入れ時や製造工程の早い段階でのチェックが重要です。
製造中の異物混入
製造中にも異物混入は発生します。例えば、焼き菓子を焼成する機器の破片、清掃に使用した紙の繊維や切れ端、ブラシの毛のほか、従業員の毛髪や絆創膏が入るかもしれません。こうした製造中の混入を検査するには、金属検出機やX線検査装置が有効です。
包装時の異物混入
包装工程でも異物混入のリスクがあります。例えば、包装材の切れ端の混入や包装フィルム圧着時の巻き込みのほか、従業員の毛髪などが混入する可能性もあります。
HACCPにもとづく異物混入対策のポイント

製造ラインでは、どのような異物混入対策が必要なのでしょうか。現在、すべての食品等事業者に求められている衛生管理の手法がHACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)です。
HACCPとは、原料の入荷から製品の出荷に至る全工程において特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保しようとするもので、異物混入対策もこの手法に則って行われます。ここでは、各工程での異物混入対策のポイントを見ていきましょう。
原材料の受け入れ
原材料の受け入れ段階は、異物混入対策の最初の重要なポイントです。この段階で適切な検査と記録をすることで、後の工程での異物混入リスクを大幅に低減できます。
まずは目視検査による異物の確認を実施し、明らかな異物の有無を確認します。このときに、原材料の検査と記録を徹底することが重要です。
さらに、金属検出機や磁気分離器を活用して、金属を含む硬質異物を取り除きます。
調合
調合は、複数の原材料を混合する工程であり、異物混入のリスクが高まる重要なポイントです。
調合前後でも、目視検査の徹底は必要となります。さらに、調合機器や周辺設備の定期的な清掃・点検や、作業環境の整備・清掃をすることで、異物混入のリスクを低減できます。
また、ウェイトチェッカーを活用し、調合する原料の重量を確認・記録しましょう。ウェイトチェッカーを導入することで各原料の正確な計量が可能となり、調合比率のミスを防止できるだけでなく、異物混入や規定外の重量の製品を検知できます。
充填
製品を容器に詰める工程である充填の際にも、異物混入対策は欠かせません。充填機の部品のゆるみや破損が異物混入の原因になることもあるため、定期的な点検が重要です。摩耗しやすい部品は計画的に交換することで、破片の混入を防ぐことができます。
なお、ウェイトチェッカーを活用して充填後の製品重量を計測することで、異物混入だけでなく充填量のミスも防げます。また、X線検査装置を導入すれば、充填後の製品内部を非破壊で検査し、金属以外の異物の検出が可能です。
密封
適切な密封は製品の品質保持に不可欠であり、同時に異物混入を防がなければならない工程でもあります。 密封の工程で包装材そのものを巻き込むことも考えられるため、密封後のチェックを行うようにしてください。密封した後のチェックには、金属検出機やX線検査装置が有効です。
熱処理・冷却
熱処理・冷却工程での適切な管理は、微生物の制御だけでなく、異物混入対策にもつながります。温度と時間の管理・監視と同時に、機器の洗浄や残留物の除去、作業環境の適切な管理が重要です。使用する機器類の整備や点検を定期的に行い、異物混入を防ぎましょう。
包装・出荷
最終工程である包装・出荷の段階は、異物混入対策の最終関門といえます。
目視だけでは防ぎきれない異物混入のリスクを可能な限り低減して包装・出荷することは、消費者の安全を守るだけでなく、企業や製品のブランドイメージを守ることにもつながります。
チェックウエイアー(ウェイトチェッカー)を活用して最終製品の重量を高精度で計測することで、規定から外れた重量の製品を自動的に排除可能です。
異物混入対策を支える検査機器
食品製造における異物混入対策には、高精度の検査機器が欠かせません。これらの機器は、製造工程の各段階で異なる役割を果たし、製品の安全性と品質を確保します。ここでは、主要な3つの検査機器について、詳しく見ていきましょう。
金属検出機
金属検出機は、製品や原料内部に含まれている、目視では確認できない金属異物を検出できる検査機器です。食品製造工程において、金属類の混入は重大な品質問題につながるため、金属検出機の導入は異物混入対策の要となります。
金属検出機には「コンベヤ式」「自由落下式」「パイプライン式」などがあり、検査対象の液体、流動体、粉体といった形状に応じて使い分けることが可能です。
ミネベアミツミグループのミネベアインテックが取り扱う金属検出機は、300種類以上のコイルサイズを取り揃えており、対象物に合ったコイルを選定することで精度を高めることができます。さらに、検査品の形状や質量に合わせて最適な排出方法を選べるほか、簡単操作とタッチパネルで信号を可視化できるという特徴があります。
X線検査装置
X線検査装置は、X線の透過率を利用して物体内部の画像を取得し、検査や分析をする装置です。この装置は、金属検出機では検出が難しいガラス、石、骨、貝殻などの硬質異物も検出できるため、食品製造における異物混入対策に重要な役割を果たしています。また、員数検査、質量検査、ボイド検査、形状検査、充填検査にも利用可能です。
ミネベアインテックでは、オールインワン設計でコンパクトなX線検査装置を取り扱っています。ガラス・石・ゴム・骨といった金属以外の硬質異物の検査に有効で、さらには製品内の個数の過不足、空洞や気泡、割れ・欠け・寸法など、さまざまな検査に活用できます。
チェックウエイアー(ウェイトチェッカー)
ウェイトチェッカーは、食品や医薬品等の製造工程において、質量や充填量の管理に使用される高精度の質量測定装置です。この装置は、製品や原料の質量を高速かつ高精度で計量でき、製造ラインの効率化と品質管理の向上に大きく貢献します。
ウェイトチェッカーは、原料などの少量をチェックできるものも、包装・梱包後の高重量をチェックできるものもあります。必要に応じて、ウェイトチェッカーに金属検出機やX線検査装置を組み合わせれば、異物混入をより高い精度で防ぐことができるでしょう。
ミネベアインテックの異物混入対策の支援事例
ミネベアインテックの高品質な検査機器は、食品業界を中心に多くの企業から支持されています。ここからは、異物混入対策の支援事例を紹介します。
金属検出機:チョコレート工場での金属異物検出

ミネベアインテックの金属検出機Vistusは、チョコレートメーカーLudwig Weinrichの製造ラインで活躍しています。Ludwig Weinrichでは、既存の生産ラインに金属検出機を組み込むことを検討していましたが、柔軟に設置できるVistusがこの課題を解決しました。
チョコレートバーは形状が均一とは限らず、異物を検出しにくいという難しさがありますが、Vistusは高い検出性能と信頼性を実現しています。
検査プロセスでは、スタッキングエッジでチョコレートバーを整列させ、検出コイルを通過させます。金属異物が検出されると、シリンダーがコンベヤベルトを締め、該当バッチを除去する仕組みです。この方法により、効率的かつ確実な異物検出を実現し、製品の安全性を確保しています。
金属検出機:ドライフルーツ工場での金属異物検出

X線検査装置:甘味料工場でのX線による異物検出

チェックウエイアー(ウエイトチェッカー):鶏肉製造工程でのトレーサビリティ

ミネベアインテックのチェックウエイアーは、鶏肉生産業者Valle Spluga SpAの品質向上と効率化に貢献しました。同社は、高品質な鶏肉製品を提供するため、製造工程での正確な重量選別を求めていました。そこで導入されたのが、EWK 3010チェックウエイアーです。この装置は、毎分100個の鶏肉を2g未満の精度で計量し、6段階に選別可能。過酷な環境下でも安定稼働し、IP66の保護等級で洗浄も容易です。また、SAPシステムとの連携により、製品のトレーサビリティを確保し、食品安全性を高めます。高速処理と高精度計量は、Valle Spluga SpAのニーズを満たし、製品の品質と安全性を保証する上で不可欠な要素となりました。
異物混入対策は、ミネベアインテックにご相談を
異物混入対策は、食品製造業者にとって重要な課題のひとつです。異物混入を防ぐためには、原材料の受け入れから製造、包装、出荷に至るまでの、各工程で適切な対策を講じる必要があります。どの工程でも、従業員の衛生管理ルールの徹底、製造設備の定期点検と保守、各工程での製品チェックなどが重要です。
各工程に応じて、金属検出機、X線検査装置、ウェイトチェッカーなどの検査機器を活用することで、より効率的で効果的な異物混入対策が可能となります。
ドイツに開発・製造拠点を構え、堅牢・ハイジェニック(超衛生的)・高性能な製品を世界中で展開するミネベアミツミグループのミネベアインテックは、金属検出機、X線検査装置、ウェイトチェッカーの導入について柔軟に対応可能です。
各機器の導入やリプレースをお考えなら、お気軽にミネベアインテックにご相談ください。
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