アンテナとは?
仕組みや種類、選び方のポイントを解説

アンテナとは、電波を送信・受信するための部品です。

無線通信では電波の送信と受信においてアンテナが必須であり、アンテナは電波の入り口と出口の役目をする重要な部品です。私たちの生活の中には電波を利用している様々な製品が存在しており、アンテナは生活に欠かせない部品の一つになっています。

ミネベアミツミでは主に車載アンテナを開発、生産しています。
ここでは、アンテナの仕組みや種類、製品の選び方のポイントを解説します。

1. アンテナとは電波を送信・受信するための部品のこと

アンテナとは、空間の電波を受信し、電気信号を電波に変えて空間に放出することで通信を行う電気部品のことです。

私たちの生活の中には様々な通信が発生しており、対応するアンテナも用途や使用場所などにより、大きさも形状も多種多様なタイプが開発されています。

2. アンテナの仕組み

アンテナの仕組み「送信」「受信」

アンテナは、電気エネルギーを空間に放射(送信)したり、空間にある電気エネルギーを吸収(受信)するものであり、高周波エネルギーを電磁波エネルギー(電波)に変換する変換器です。

また、アンテナの仕組みで重要な要素は、「周波数」「指向性」「偏波」です。
一般的には、「周波数」により使用するアンテナの大きさ、「指向性」、「偏波」により使用するアンテナの種類、大きさがかわっていきます。

電波・周波数・波長

1秒間の波の数=周波数

「電波」とは空間を伝播・伝搬する電磁波をさし、1秒間で繰り返される波の数を「周波数」といいます。「周波数」は「Hz(ヘルツ)」という単位で表され、例えば10Hzは、波(山と谷で1組)が1秒間に10回繰り返されていることを意味します。波の山(谷)から山(谷)の距離を「波長」といいます。

偏波

「偏波」とは伝搬する電磁波の向きのことをさし、送受する電波の「偏波」に合わせてアンテナの種類がかわります。

「偏波」は、電波が波打つようにして前方へ進む「直線偏波」、電波が回転しながら前方へ進む「円偏波」の大きく2つに分けられ、用途に応じて、最適な「偏波」が選択されます。

「直線偏波」は主に地上デジタル放送などで使用され、水平方向に電波が伝搬する「水平偏波」、垂直方向に電波が伝搬する「垂直偏波」があります。

「円偏波」は主にBS放送などで使用され、進行方向に向かって右回転する「右旋円偏波」、左回転する「左旋円偏波」があります。

左右旋円偏波

アンテナと電波の関係

アンテナの原理は、アンペールの法則とファラデーの電磁誘導の法則という2つの法則に基づいています。

アンペールの法則とは、1820年フランスの物理学者アンドレ=マリー・アンペールによって発見された「電流とその周囲にできる磁界の関係の法則」であり「アンペールの右ねじの法則」とも呼ばれています。ファラデーの電磁誘導の法則は、1831年イギリスの物理学者マイケル・ファラデーによって発見された「1つの回路に生じる誘導起電力の大きさは、その回路の磁界の時間的な変化の割合に比例する」というものです。

つまり、電流が時間的な変化をする(電流の向きが変わる)ことにより、アンペールの法則に従って周囲に磁界が発生します。発生する磁界の大きさも周期的に変化するため、ファラデーの電磁誘導の法則に従い、磁界に応じた強さの電界が発生します。発生した電界の周辺には、さらに磁界が発生する、という繰り返しにより、アンテナを起点とした電磁波が発生します。そして、アンテナの周囲にある電磁波によって、アンテナに流れる電流が発生します。

3. アンテナの種類

アンテナは、放射する電波に方向性を持たせた「指向性」と全方位に一様な「無指向性」の2種類に分類することができます。
「指向性」のあるアンテナは、特定の方向からの電波を強く送受信することができ、「無指向性」のアンテナは全方位から電波を一様に送受信できます。
ミネベアミツミでは、車載に最適な無指向性アンテナを主に開発、生産しています。

アンテナの種類

それでは、具体的にどのような種類のアンテナがあるのか、代表的なものをご紹介します。

指向性アンテナ

特定の方向からの電波を強く送受信することが可能なアンテナ

  • 八木・宇田アンテナ
  • パラボラアンテナ
  • GPS/GNSSアンテナ

など

無指向性アンテナ

全方位から電波を一様に送受信が可能なアンテナ

  • ロッドアンテナ
    (ホイップアンテナ)
  • シャークフィンアンテナ
    (ドルフィンアンテナ)
  • フィルムアンテナ

など

ロッドアンテナ(ホイップアンテナ)

ラジオや無線アンテナなどに用いられている、垂直に立てた線状型アンテナです。
構造および設置がシンプルであり、幅広く使用されています。

特に、長さ5cm程度のコンパクトなホイップアンテナは、車載ラジオ用に軽自動車やコンパクトカーの多くに採用されています。

シャークフィンアンテナ(ドルフィンアンテナ)

シャークフィンアンテナは、サメの背びれのような形状からその名が付けられています。
ロッドアンテナより低背で、周波数帯の異なる様々なメディアに対応可能です。

フィルムアンテナ

主に車載用であり、フロントガラスに貼り付けて使用します。
アンテナ本体は、透明フィルムとセパレーターの間に挟まれています。

GPS/GNSSアンテナ

地球の上空を周回している人工衛星からの電波の受信を行うことで、地球上のさまざまなものの位置を測位することが可能となり、位置を正確に割り出す際に使用されています。現在では、土木工事における測量やカーナビなど、幅広い用途で活用されています。また、人工衛星からの電波を受信して極めて正確な時刻を計測することが可能なことから、通信基地局やローカル5Gの時刻同期にも活用されています。

4. ミネベアミツミのアンテナ

ミネベアミツミでは、主に車載アンテナを開発・生産しています。多種多様な製品を取り扱っているため、受信機/送受信機からアンテナまでの総合サポートが可能です。製品の詳細は、高周波(アンテナ、車載デバイス)製品紹介ページ からご確認ください。

高周波(アンテナ、車載デバイス)

車載アンテナの歴史

車載アンテナはラジオを聴くためのものから始まりました。世界初のカーラジオは約100年前に発売され、その後、ダッシュボード埋め込み型カーラジオが開発され、アメリカ合衆国でカーラジオの普及が始まりました。日本で初めてラジオが車載に搭載されたのは1955年頃といわれています。

1990年頃、世界初の市販GPSカーナビが発売され、カーナビが普及していきます。今日では、車載アンテナは、ラジオ電波の他にも、車内でテレビを見るために必要な地デジ電波、位置情報や時刻計測に利用される衛星測位システムの電波受信に使用されています。

ミネベアミツミの車載アンテナの歴史

ミネベアミツミの車載アンテナの歴史は、1976年のカーラジオレシーバーから始まります。

その後、キーレス レシーバーやGPSレシーバー、無線LAN/Bluetooth®モジュールが開発生産されました。アンテナは、1993年のGPSアンテナから始まり、シャークフィンアンテナや高精度測位用GNSSアンテナの開発生産へとつながりました。現在まで、レシーバーは40年以上、アンテナは25年以上の実績がございます。※2024年現在

5. GPS/GNSSとは

最後に、アンテナにも関係し、今後ますます活躍の場がひろがっていくGPS/GNSSについて簡単にご紹介いたします。
自動車で旅行に行かれる際、カーナビを利用して目的地まで到着できるのは衛星測位システムのおかげです。このように、GPSを代表とする衛星測位システムは日常生活に必要不可欠となっています。ミネベアミツミでは、GPS/GNSS受信用アンテナや高精度測位用GNSSアンテナを開発、生産し、様々な場面で活用されています。

GPSとは

GPSとは、「Global Positioning System」の略称であり、日本語では「全地球測位システム」とも訳されます。アメリカ合衆国が、航空機や船舶の位置情報をリアルタイムで正確に把握するために開発を進めてきた衛星測位システムです。

地球を周回している人工衛星(GPS衛星)の電波を端末が受信し、位置・距離・時刻などから現在位置を測位しています。

GNSSとは

GNSSとは、「Global Navigation Satellite System」の略称であり、日本語では「全球測位衛星システム」とも訳されます。アメリカのGPS(Global Positioning System)、ロシアのGLONASS(Global Navigation Satellite System)、欧州委員会のGalileo、中国のBeiDou(BeiDou Navigation Satellite System)などの衛星測位システムの総称を指します。現在、地球のほぼ全ての場所で位置を測定することができます。

測位計測の他にもGNSSの重要な活用方法として「正確な時計」があります。GNSSは、わずかな誤差(約10のマイナス8乗秒)で時間を計測することができ、スマートフォンなどの通信に使用される通信基地局やローカル5Gの通信設備の時刻同期などに活用されています。

また、GNSSは、火山活動や地震活動をGNSS受信器の設置位置の動きから予兆を捉えて防災に役立てたり、ドローンを活用した写真測量や航空測量といった「測量業務」などの産業・農業・防災にも活用されています。

GPSとGNSSの違い

GPSとGNSSの違いは「測位精度の差」です。GPSが測位する場合はGPS衛星のみの信号を利用しますが、GNSSは4つの衛星測位システムの信号を利用できるためより多くの衛星から信号を利用できます。
現在、高精度の測位を必要とする現場では、GNSSに対応した受信機が多く活用されています。ただし、GNSSを利用するには、それぞれの測位衛星信号のバンド(周波数)に対応する必要があります。

GNSSの測位方法の種類と精度

GNSSの測位方法は大きく「単独測位」と「相対測位」の2つに分けられます。

■単独測位

1台の受信機に対し、測位衛星は4機以上

1地点の受信機で複数の測位衛星からの信号を受信して通信により位置を特定します。この方法では衛星の位置誤差などの影響を受けやすいため、約10〜20m(場合によっては50m)の測位誤差が生じるとされており、精度に限界があります。
船舶や飛行機、自動車などのナビゲーションに利用されています。

■相対測位

それぞれの測位衛星から、2台の受信機で受信する

同じ測位衛星から発信される信号を2地点(位置座標がわかっている地点と測定したい地点)の受信機で同時に受信し、その時間差を測定することで位置を特定します。単独測位よりも測位誤差が少なく、誤差は約1cm〜5mです。

相対測位は、測位手法の違いによって「D-GNSS測位」と「RTK測位」に分けられます。

D-GNSS測位

2地点(位置座標がわかっている地点と測定したい地点)の受信機でそれぞれ単独測位を行い、位置情報から相対位置を求める方法です。

RTK(リアルタイムキネマティック)測位

2地点(位置座標がわかっている地点と測定したい地点)の受信機と衛星との距離の差を搬送波の位相により導き出し、受信機間の相対位置を決定します。測位誤差をリアルタイムで調整でき、精度が高い測位方法です。

6. アンテナのことなら、ミネベアミツミにご相談を

アンテナは外から見てわかりにくいこともありますが、電波を扱う機器には必ず使われています。

ミネベアミツミでは、この記事でご紹介したようなアンテナの豊富な種類やサイズを取り揃えています。
アンテナをご検討の際は、お気軽にご相談ください。

導入をご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。

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