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オペアンプとは?

オペアンプとは?
特徴や応用例、選ぶポイントをわかりやすく解説

オペアンプとは、微弱な電気信号の増幅やフィルタリング、演算などができる集積回路(IC)の総称です。自作することも可能ですが、それぞれの用途に特化した多種多様な製品が開発されています。

具体的にどのような機能を持った製品があり、どんな場面で使われているのか見ていきましょう。併せて、選び方のポイントについても解説します。

1. オペアンプの構成と機能

オペアンプ(Operational Amplifier:OPアンプ)は演算増幅器とも呼ばれ、微弱な電気信号を増幅できるのが特徴です。まずは、オペアンプの基本的な構成と、主な機能について見ていきましょう。

オペアンプの基本的な構成

オペアンプはトランジスタなどの半導体素子から構成されており、図で示したように2つの入力端子と1つの出力端子、プラス・マイナス両電源端子の5つの端子を持ちます。
プラス電源端子側の入力端子を非反転入力端子、マイナス電源端子側を反転入力端子と呼びます。

オペアンプの主な機能

オペアンプにはいくつかの機能がありますが、基本的な機能は2つの入力端子に入力された微弱な電気信号などの電圧差を増幅することです。このような性質を増幅機能といい、増幅の大きさは「ゲイン」「増幅率」などと表されます。

光や熱、音といった物理現象はアナログ信号です。私たちは、センサーなどを用いてこれらの物理現象を捉え、電気信号やデジタル信号に変換することで暮らしやビジネスに役立てています。
例えば、気温をセンサーで測って数値にし、コンピューターなどの機器で扱いやすくすることも、物理現象をデジタル信号に変換することにあたります。

しかし、センサーで変換した電気信号は微弱なため、コンピューターで扱う際には増幅が必要です。そこで、オペアンプが信号を増幅し、扱いやすくします。これがオペアンプの増幅機能です。
さらにオペアンプは、ノイズ処理や抽出処理を実現するフィルター機能も有しています。処理したい電気信号以外の不必要な電気信号、いわゆるノイズを除去し、特定の周波数帯の信号だけを抽出するのがオペアンプのフィルター機能です。

さらに、オペアンプは、さまざまな四則演算(加算・減算・微分・積分)回路を作ることもできます。具体的には、非反転増幅回路、反転増幅回路、バッファー回路、コンパレータ回路、オシレータ回路などです。

2. オペアンプの分類

オペアンプには、構成される半導体素子や電源方式の違いなどにより、いくつかの分類方法があります。ここでは、オペアンプの主な分類を、4つご紹介します。

半導体素子(トランジスタ)による分類

オペアンプを構成する半導体素子(トランジスタ)は、大きく分けて「バイポーラトランジスタ」「ユニポーラトランジスタ」の2種類です。それぞれ、「バイポーラオペアンプ」「ユニポーラオペアンプ」と呼ばれ、分類されます。

バイポーラトランジスタを用いたバイポーラオペアンプの特性は、耐圧が高いこと。一方で、入力誤差の原因となる入力バイアス電流が発生しやすいことや、入力信号を入力していないのに電圧が出力されるといった誤動作の原因となるオフセット電圧が発生しやすいことも特徴です。

ユニポーラトランジスタを用いたユニポーラオペアンプは、バイポーラオペアンプとは対照的に、入力バイアス電流が小さいことに加え、消費電力も低いという特性を持ちます。また、バイポーラオペアンプと比べて、低耐圧であることも特徴です。
ユニポーラオペアンプには、「CMOSオペアンプ」や「JFETオペアンプ」といった種類があります。CMOSオペアンプはP型トランジスタとN型トランジスタを組み合わせたCMOSを使用したもので、消費電力が小さいという特徴があります。JFETオペアンプは接合型電界効果トランジスタと呼ばれるJFETを使用したもので、高速スイッチングが可能です。

電源方式による分類

オペアンプは、「単電源」を使うのか「両電源」を使うのかという、電源方式によって分類することができます。
グランド(GND)と呼ばれる電圧の基準は、両電源の場合はプラス・マイナスの中心となりますが、単電源の場合はプラス・マイナスどちらか片方です。

入力回路による分類

入力回路によるオペアンプの分類には、「Pch MOSFET入力差動対」「Nch MOSFET入力差動対」「フルレンジ入力差動対」があります。
入力差動対とは、2つの入力信号の差分を取り出して増幅することです。Pch MOSFET入力差動対は、高電位を扱う回路に、Nch MOSFET入力差動対は低電位向けに適しています。フルレンジ入力差動対はPch MOSFETとNch MOSFETの組み合わせで構成され、広範囲の電位で動作が可能です。
フルレンジ入力差動対の代表的なものにはレール・ツー・レール(Rail to Rail)があり、電源からグランド(GND)までのほぼすべての範囲の入力をカバーすることができます。

電気的特性による分類

オペアンプは、電気的特性の特徴によって分類されることもあります。
中でもオフセット電圧や消費電力、ノイズなどの低さは、後述するオペアンプを選ぶ際に重要となる指標でもあります。

3. オペアンプの主な用途

信号増幅機能、フィルター機能などを備えたオペアンプは、私たちの日々の暮らしやビジネスに関わる多くの電子機器に不可欠です。代表的な用途をいくつかご紹介します。

モバイル機器や家庭用品

オペアンプは、スマートフォンやタブレットの光センサーや圧力センサーにも利用されています。そのほか、ガスコンロや給湯器の炎を検出する機器など、身の回りの電子機器の多くにオペアンプは欠かせません。

産業機器

オペアンプは、産業機器にも利用されます。高精度の計測機器などが一例です。

自動車

自動車のエンジン周りでは、電流や加速度、温度などのセンサー類に対してオペアンプが必須です。また、エアバッグやカーナビ、イモビライザーといった周辺機器にもオペアンプが活用されています。

医療機器

オペアンプは、心電図のモニター、血圧計、パルスオキシメーターなどで使用されています。例えば、心電図のモニターにおいては心臓の拍動による微弱な電気信号を、増幅したりノイズ除去したりするのがオペアンプの役割です。

オーディオシステム

信号を増幅するプリアンプ、フィルター機能を活かしたイコライザーなど、オーディオ機器のアナログ回路でオペアンプが使われています。オーディオシステムではオペアンプの性能が音質に影響を与えることも少なくないため、オペアンプがオーディオの性能を決めるといっても過言ではありません。

4. オペアンプを選ぶ際のポイント

オペアンプには、さまざまな種類があります。実際、使用を検討した際にはどのような点に注意すればいいのか、選定ポイントについて見ていきましょう。

使用する電子機器やアプリケーションの要件

まずは、使用する電子機器やアプリケーションの要件に適したオペアンプを選ぶことが重要です。
具体的には、オフセット電圧が低い、温度変化による特性変化が低い、低電圧で駆動するかどうかなどです。

動作電源電圧範囲

オペアンプのデータシートには、動作電源電圧範囲が記載されています。使用する予定の電源電圧がこの範囲内になければ正しく動作しない可能性があるため、確認が必要です。

入力電圧範囲

入力電圧範囲とは、オペアンプに印加できる電圧の範囲のことです。オペアンプの入力端子に印加する予定の電圧が、入力電圧範囲に示されている数値内であれば問題ありません。

入力オフセット電圧

入力オフセット電圧とは、2つの入力端子間に生じるわずかな電圧のずれのことです。高精度のアプリケーションを使用したい場合は、入力オフセット電圧が低いオペアンプが望ましいといえます。

利得帯域幅積(GBW)

利得帯域幅積(GBW:Gain Bandwidth Product)は、オペアンプなどが動作できる周波数の限界を示し、信号増幅性能の指標のひとつです。必要な周波数範囲での信号増幅能力を確保するために、十分なGBWを持つオペアンプを選ぶといいでしょう。

温度範囲、温度ドリフト

オペアンプを使用する環境の温度についても確認が必要です。使用環境の温度が、データシートの温度範囲内にあることはもちろん重要なポイントですが、温度ドリフトと呼ばれる温度変化による精度の低下が少ないことも選択のポイントとなります。
なお、温度ドリフトが限りなくゼロに近い、ゼロドリフトアンプと呼ばれる製品も登場しています。

5. オペアンプのことなら、製品や知識が豊富なミネベアミツミにご相談を

オペアンプは、さまざまな電子機器の正常な動作を支える技術です。さらに近年では、スマートファクトリーやスマートホーム、ウエアラブルデバイスといった分野での利用拡大も期待されています。

ミネベアミツミおよびグループ会社のエイブリックでは、オペアンプを豊富にラインアップしています。オペアンプに関して困ったこと、気になることがございましたら、いつでもお気軽にご連絡ください。

導入をご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。

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