コイルとは?
基本原理や構造、主な種類と役割をわかりやすく解説

コイルとは、電気回路で使用される重要な電子部品の一種です。この記事では、コイルの仕組みや基本原理となる理論のほか、コイルの主な役割と種類についてわかりやすく解説します。 さらに、コイルが日常生活でどのように役立っているのかもご紹介していますので、ぜひご覧ください。

1. コイルとは、電気回路に利用される電子部品の一種

コイルとは、細い導線を螺旋状に巻いた電子部品の一種で、インダクタとも呼ばれます。コイルは、直流電流を流しやすい一方で交流電流は流しにくいという性質を持っています。この性質を利用して電源回路の安定化やノイズフィルターに用いられるほか、コンデンサーと組み合わせることで発振回路、同調回路といった電気回路内で多くの重要な役割を果たします。

■基本的なコイルの構造

基本的なコイルの構造

コイルが電子回路で使用される特性を生み出す基礎となるのは「自己誘導」です。自己誘導とは、コイルに電流を流すと内部に磁場が生じ、電流を増減させると磁場が変化して電流が誘起される現象のことをいいます。なお、磁場の変化とは、磁場の強さや方向が変わることです。例えば、電流が増加すると磁場は強くなり、電流が減少すると磁場は弱くなります。また、電流の向きが反対になると、磁場の方向も反転します。

コイルに電流を流すと起こること

「右手の法則」や「右ねじの法則」を、小学校や中学校で習った憶えがある方もいるのではないでしょうか。
導線に電流を流すと、その導線を中心として同心円状の決まった方向に磁界が発生します。この電流と磁界の方向を、右手の親指を立てて残り4指を握った状態に当てはめたものが右手の法則です。親指の向きに電流が流れているとすると、残り4本の指の向きは磁界の方向と一致します。この法則は、「アンペールの法則」とも呼ばれます。

■アンペールの法則

アンペールの法則

今度は、導線をぐるぐる巻いたコイルに電流を流してみましょう。すると、同じ向きに発生した磁界は束ねられ、コイルを貫通するように磁束が生まれます。
さらに、コイルの中心に磁性体の芯(鉄心など)を入れると、磁束はより多く通れるようになります。

■コイルにおける磁束の発生イメージ

コイルにおける磁束の発生イメージ

コイルの中を流れる電流が変化すると磁束も変わり、その結果としてコイルに電圧が生じて電流が流れるのです。このときコイルに生じる電圧を「誘導起電力」といい、電流の変化を妨げる方向に作用する性質を持ちます。これは、「レンツの法則」と呼ばれます。

コイルは、直流電流(一定の方向に流れる電流)はそのまま流す一方で、交流電流(流れる方向が変化する電流)に対しては常に抵抗として働き、電流の流れを妨げるのが特徴です。 また、電流の変化の速さにあたる周波数が高くなるほど、コイルは電流を流しにくくなる性質があります。 これは、コイルのインダクタンス、つまり電流の変化を妨げる性質が周波数に応じて増加するためです。 この性質により、コイルはさまざまな電子機器や電気機器で重要な役割を果たしています。

2. コイルの基本原理

コイルの基本原理は、「電磁誘導(electromagnetic induction)」と呼ばれる現象にもとづいています。電磁誘導とは、磁束が変化することで電流が誘起される現象のことで、イギリスの科学者であるマイケル・ファラデーが1831年に発見しました。 ここでは、コイルの基本原理や、コイルの性能を示す「インダクタンス」について詳しく解説します。

コイルの電磁誘導によって起電力が発生する

電磁誘導には、「自己誘導」と呼ばれるものと「相互誘導」と呼ばれるものがあります。
自己誘導とは、コイルに流れる電流の変化によってコイル自身の磁束が変化すると、誘導起電力が発生する現象のことです。

■自己誘導による誘導起電力の発生イメージ

自己誘導による誘導起電力の発生イメージ

相互誘導とは、コイルを複数並べた場合に、1つのコイルの電流の変化が隣接する別のコイルに誘導起電力を生じさせる現象です。
鉄心に2つのコイルを巻き、電源に近い側を一次、電源から遠い側を二次としたとき、一次側のコイルに電池をつないでスイッチをON/OFFすると、二次側のコイルに起電力が発生して電流が流れます。このとき、二次側に流れる電流を誘導電流と呼びます。

■相互誘導による電流の発生イメージ

相互誘導による電流の発生イメージ

これらの現象を応用して、コイルはさまざまな電子機器でエネルギーの伝達や変換に利用されているのです

インダクタンスはコイルの起電力の比を示す係数

インダクタンスとは、コイルにおける電流の変化に対して生じる起電力の比を表す係数です。インダクタンスが大きいほど、電流の変化に対して強い起電力が生じます。

自己誘導によるインダクタンスを「自己インダクタンス」、相互誘導によるインダクタンスを「相互インダクタンス」といいますが、通常「コイルのインダクタンス」という場合は、自己インダクタンスを指します。

3. コイルの用途と種類

コイルが電気回路において果たす役割はさまざまです。ここでは、コイルの用途と、それぞれの代表的な種類をご紹介します。

電源回路用

電源回路用のコイルには、パワーインダクタ、チョークコイルと呼ばれるものがあり、電流の安定化、ノイズの除去といった役割を持ちます。これらのコイルは電子機器の安定した動作を支えるほか、特にスイッチング電源においてエネルギーを効率的に変換するために不可欠な部品です。

電源回路用のコイルにはもうひとつ、相互インダクタンスにより入力側の電圧を異なる電圧に変化させるトランスというものがあります。これは、感電や設備の損傷を防ぐために、一次側と二次側の回路を電気的に分離して安全性を確保する機能を備えています。主な用途はトランス(変圧器)、ラジオ、無線回路、オーディオトランスなどです。

ミネベアミツミでは、各種電子機器のDC-DCコンバータ電源に使用されるチョークコイルや、DC‐DCコンバータ、スイッチング電源、IGBT用絶縁トランスに使用されるコイル製品を取り揃えています。

高周波回路用

高周波回路用のコイルには、可変コイル、チップインダクタといった種類があり、無線LANなどの高周波帯域通信に多く使われます。これらのコイルは高周波回路ではフィルターとして機能し、不必要な高周波ノイズを除去するのが主な役割です。また、無線通信においては、特定の周波数を選択するための同調回路にも利用されます。

ミネベアミツミでは、AM/FMチューナー用の高周波増幅回路用トランスおよび中間周波トランス用可変コイルや、車載用の超音波センサ(コーナーセンサ、バックセンサ)駆動用回路に使用されるトランス用コイルを取り揃えています。

4. コイルの巻線構造の種類

コイルの種類は、形成方法やコアの素材によってさまざまです。ここでは、コイルの代表的な3つの種類についてご紹介します。

巻線コイル

巻線コイルは、鉄、フェライトなどの芯に導線を巻いたシンプルな形状で、その巻き方や使用する材料によって特性が変わり、さまざまな用途に適応できる柔軟性を持つことが特徴です。主にインダクタとして、電源回路やトランス、モーターなど、多岐にわたる用途で使用されています。

巻線コイル

積層コイル

積層コイルは、フェライトやセラミックのシートに導電パターンを印刷して、交互に積み重ねて作られるコイルです。軽量でスペース効率が良いため、主にスマートフォンやノートパソコンなどの電子機器に使われます。

積層コイル

薄膜コイル

薄膜コイルは、薄い金属膜をシリコンやガラス基板上に形成したコイルです。高周波回路や高精度の電子機器で使用されることが多く、コンパクトで高性能な回路設計が可能です。薄膜コイルは集積回路(IC)内に直接形成することができるため、マイクロエレクトロニクスの分野で重要な役割を果たしています。

薄膜コイル

5. コイルのことなら、ミネベアミツミにご相談を

コイルは電子機器において重要な役割を果たす部品です。さらに、今後の電子機器の進化を支える役割をも担っている部品といえます。
ミネベアミツミでは電子機器の電気的な役割を担う高性能なコイルを取り扱っています。コイルに関して気になることや技術的なご相談がございましたら、ミネベアミツミにお気軽にご相談ください。

導入をご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。

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