1. シャントレギュレーターとは
シャントレギュレーターは、電圧を一定にするためのリニアレギュレーターの一種です。
リニアレギュレーターは大きく ”シャントレギュレーター” と ”シリーズレギュレーター” に分けられます。
双方ともに不安定な入力電圧から、入力電圧より低い安定した電圧を作ることができます。
シャントレギュレーターは、電圧を降下させる抵抗を介して電流を引き込み、安定した電圧を作ります。
主に基準電圧として使用され、AC-DCスイッチング電源回路など、身近な機器に多く使われています。
2.シャントレギュレーターとシリーズレギュレーターの違い
回路構成が異なる
シリーズレギュレーターもシャントレギュレーターもリニアレギュレーター(Linear Regulator)の一種です。
図1の様にレギュレーターの入力電圧を上げていくと出力電圧は固定されるまでリニアに上がっていき、一定電圧に達すると定電圧制御されます。
シャントレギュレーターは制御素子が負荷と並列に入っており、シリーズレギュレーターは制御素子が負荷と直列に入っています。
※簡易表現のためコンデンサ等を省いています。

図1 シャントレギュレーターとシリーズレギュレーターの入力電圧VIN vs 出力電圧VOUT特性
シャントレギュレーターもシリーズレギュレーターも入力電圧を上げていくと設定された出力電圧で一定となります
シャントレギュレーターとシリーズレギュレーターは、どちらも入力電圧の変動による出力電圧の影響を制御し、信頼性の高い電源を供給するために使用されますが、回路構成が異なります。
シャントレギュレーターの構成

図2 シャントレギュレーターを使用したレギュレーターの構成(構成例A)

図3 構成例Aの場合の電流値のイメージ
シャントレギュレーターでは出力電圧を安定に保つために一定の電流をカソードに流す必要があります。
※MM1431 シリーズではカソード電流(IK)は0.6mA~50mAを推奨しています。
シャントレギュレーターを使用した場合のレギュレーター(図2 構成例A)は、前段に接続された抵抗を介してカソード電流(IK)を引き込むことで電圧降下を発生させ、一定の電圧になるように制御します。そのため出力電流が小さな時でも最大負荷時と同じ回路電流(IIN)が流れてしまい、電力消費が大きくなる傾向があります(図2/図3 参照)。シャントレギュレーターの大きな利点は簡単に高精度な基準電圧(Vref)が作れることです。そのため様々な電子回路で活躍しています。
シリーズレギュレーターの構成

図4 シリーズレギュレーターの構成(構成例B)

図5 構成例Bの場合の電流値のイメージ
シリーズレギュレーターは出力電圧を安定に保つために一定の消費電流を必要としますが、大きな出力電流の領域ではICC≒IOUTとなります。
一方、シリーズレギュレーターでは制御素子が負荷と直列に入っています(図4 構成例B)。シャントレギュレーターで構成されたシリーズレギュレーターと比較にして制御回路で消費される電流は、出力電流に対しほぼ一定です。このため無負荷時の電力損失が少なく、効率的な電圧安定化が可能です。(図4/図5 参照)
3.シャントレギュレーターにできること(応用回路例)
シャントレギュレーターを使用した回路構成は様々な電気回路で使われています。次からはシャントレギュレーターの応用回路構成例を示します。
① 基準回路を構成することができる(図6)

図6 基準回路
シャントレギュレーターを使った最も基本的な基準回路は下記の式で表せます。
VOUT=Vref*(R1+R2)/R2 シャントレギュレーターを使うと少ない素子数で基準電圧源を構成することができます。
※VOUTはIref、VKとIKの影響によって変動しますので、考慮した設計が必要です。
② シリーズレギュレーターを構成することができる(図7)

図7 シャントレギュレータを使ったシリーズレギュレータの回路例
シャントレギュレーターを使ったシリーズレギュレーターの回路例です。このような回路では、少ないディスクリート素子で簡単に簡易的なシリーズレギュレーターを構成することができます。
シャントレギュレーター単体と同様にIOUTによらず一定の電圧を出力します。出力段のパワートランジスタをドライブすることで、シャントレギュレーターの最大カソード電流よりも大きな電流を出力することが可能です。
以下の式で表すことができます。 VOUT=(1+R1/R2)Vref
③ 定電流源を構成することができる(図8)

図8 シャントレギュレーターを活用した定電流源回路例
一定の電流を出力したい場合の回路構成例です。
下記の式で表すことができます。
IOUT=Vref/R2 IOUTを一定に駆動できるので、定電流駆動したい時などに便利です。
④ AC-DCスイッチング電源の2次側制御電圧の基準電源を構成することができる(図9)

図9 シャントレギュレーターを活用した絶縁型電圧制御回路の例(2次側制御電圧の基準回路)
AC-DCコンバータでフォトカプラを使用した駆動回路例です。
2次側の出力電圧は以下の式で表すことができます。
VOUT=Vref*(R1+R2)/R2 フォトカプラに流れる電流は1次側にフィードバックされVOUTを制御します。
フォトカプラはR4、C1はスナバ回路で発振対策に使われています。
4.シャントレギュレーターの代表特性
5.シャントレギュレーターの選び方
ミネベアミツミのシャントレギュレーターには2種類の基準電圧があります。(1.25V系、2.50V系)
また、精度や絶対最大定格、パッケージで細かくラインアップをそろえております。
6. ミネベアミツミのシャントレギュレーター
シャントレギュレーター (リファレンス電圧 2.495V)
機種名 | リファレンス電圧 Typ.(V) | リファレンス電圧精度 Typ. | 絶対最大定格(V) | 推奨動作条件 カソード電流範囲 |
動作温度範囲 | パッケージ | ピン配置 (TOP VIEW) |
---|---|---|---|---|---|---|---|
MM1431CU | 2.495 | 0.8% (±20mV) | 35 | 0.6mA~50mA | -30℃~+105℃ | SC-82ABB | ![]() |
MM1431DU | 2.495 | 0.4% (±10mV) | 35 | 0.6mA~50mA | -30℃~+105℃ | SC-82ABB | ![]() |
MM1431CN(準備中) | 2.495 | 0.8% (±20mV) | 35 | 0.6mA~50mA | -30℃~+105℃ | SOT-25A | ![]() |
MM1431DN | 2.495 | 0.4% (±10mV) | 35 | 0.6mA~50mA | -30℃~+105℃ | SOT-23A | ![]() |
MM1431EN | 2.495 | 0.8% (±20mV) | 35 | 0.6mA~50mA | -30℃~+105℃ | SOT-23A | ![]() |
MM1431FN | 2.495 | 0.5% (±12mV) | 35 | 0.6mA~50mA | -30℃~+105℃ | SOT-23A | ![]() |
MM1431GN | 2.495 | 0.8% (±20mV) | 35 | 0.6mA~50mA | -30℃~+105℃ | SOT-23A | ![]() |
シャントレギュレーター (リファレンス電圧 1.24V~1.27V)
機種名 | リファレンス電圧 Typ.(V) | リファレンス電圧精度 Typ. | 絶対最大定格(V) | 推奨動作条件 カソード電流範囲 |
動作温度範囲 | パッケージ | ピン配置 (TOP VIEW) |
---|---|---|---|---|---|---|---|
MM1530CU | 1.270 | 0.8% (±10mV) | 12 | 0.3mA~15mA | -30℃~+105℃ | SC-82ABB | ![]() |
MM1530DU | 1.250 | 0.8% (±10mV) | 12 | 0.3mA~30mA | -30℃~+105℃ | SC-82ABB | ![]() |
MM1530DN | 1.240 | 0.5% (±6mV) | 12 | 0.3mA~30mA | -30℃~+105℃ | SOT-23A | ![]() |
MM1530EN | 1.270 | 0.8% (±10mV) | 12 | 0.3mA~15mA | -30℃~+105℃ | SOT-23A | ![]() |
MM1530JN | 1.240 | 0.5% (±6mV) | 12 | 0.08mA~15mA | -30℃~+105℃ | SOT-23A | ![]() |
小ロットをご希望の場合は、以下リンクよりお求めください。
ミツミ電機 Online Shiop(chip1stop)