1. リセットICとは?
リセットIC(ボルテージディテクタ、電源監視IC)は、電源ICの一つです。
主に電子機器の電源電圧を監視する目的で用いられ、電圧が規定の値(しきい値)に達したことを監視・検出することができます。
リセットICは、身近な機器に多く使われています。事務機器や白物家電など、あらゆる電子機器が安全に起動したり停止したりするのを、リセットICは「電源電圧を監視する」というかたちで実現しています。リセットICの機能をマイコン(MCU: Micro Controller Unit)等で包括するケースもある一方で、リセットICだから実現できる機能や安全性もあります。次の項目で、リセットICでできることを詳しく紹介していきます。
※リセットICは、ボルテージディテクタ、スーパーバイザなど様々な名称で呼ばれています。
2.リセットICにできること
マイコン(MCU)を安全に起動/停止する。
多くの電子機器にはマイコン(以下 MCU)が搭載されており、MCUは電子機器の動作を制御する頭脳のような役割を果たします。
MCUには最低動作電圧が定められており、これを下回る電圧が供給されている状態や、電源電圧が不安定な状態でMCUが起動すると誤動作が引き起こされ、機器自体も誤動作・故障にいたる可能性があります。
また、MCUが安定した動作を行うには、起動時にパワーオンリセット(POR : Power On Reset)*をすることが必要です。電源の立ち上がりが不安定だと、MCU内蔵のパワーオンリセットができない場合があり、起動後の動作が不安定になってしまうことがあるためです。
*パワーオンリセット・・・起動時にMCU内部のレジスタなどを初期化する動作。
リセットICは、電源ICの出力電圧がMCUの動作電圧以上になったことを監視し、MCUへのリセット信号を解除することでMCUを起動させることができます。
また、遅延時間を設定することで、MCUがパワーオンリセットに必要な間、MCUをリセット状態に保つことも可能です。
リセットの出力形式にはCMOS出力とオープンドレインの出力があります。代表例ではオープンドレインの出力でご説明しています。
また、MCUの電源電圧が低下し、最低動作電圧に近づいた際に瞬時にリセット信号を出力することで、MCUを安全にシャットダウンします。
電池の使用時間を延ばす
電池(バッテリー)は、残量がゼロに近づくと急激に出力電圧が下がります。
そのため、電池で動作する機器は、電池の出力電圧の低下が加速する前に機器の動作を制御しないと、機器の誤動作・故障につながります。
リセットICで電池の出力電圧(電池電圧)を監視すれば、電池電圧が急激に低下する前にリセット信号を発し、機器の動作を制御することができます。
加えて、検出電圧が高精度なリセットICを利用すると、電池の使用時間を延ばすことにもつながります。
電池駆動の機器に最適なリセットIC 高精度±0.5%で検出/検出電圧0.8V~
「車載」定格40V、バッテリーの電圧監視に最適なセンス分離2chリセットIC
5~10V検出
シリーズ名
PST122A
MCUの冗長性として活用する
リセット機能を内蔵したMCUを使用する場合も、リセットICを併用することが求められるケースもあります。
例えば、車載機器や産業機器など、高い安全性が求められる機器においては、MCUだけで電源監視を行うことは安全と言えない場合もあります。
万が一MCUが不具合を起こして電源監視がうまくできない場合のフェールセーフとしてリセットICを用いれば、冗長性の高いシステムを構成することができるでしょう。
安全なシステムに貢献。様々なニーズに応えるリセットIC
電圧の上昇を監視する
リセットICは、電圧の上昇(=過電圧)検出の用途にも使用されます。
過電圧の検出は、主に車載機器で求められます。
車のバッテリーから供給される電源電圧が何らかの原因で上昇した際に、過電圧検出の機能があれば、システムの中枢を担う部分(MCU等)が誤動作・故障するのを未然に防ぐことができるためです。
MCUのA/Dコンバータ(ADC)で過電圧を検出することも手軽な手段ですが、安全が重視される車載機器では、MCUとは別に電圧の検出機構を設けることが要求される場合があります。そのような場合は、過電圧検出機能を持つ複合IC等を使用する、コンパレータ等で検出回路を構成するなど方法は様々ですが、リセットICを使うことも有効な方法です。
次のブロック図のようにリセットICを使えば、MCUから独立した機構で電圧の低下・上昇を監視することができます。コンパレータを使うよりも回路構成はシンプルになります。また、電圧上昇を高精度に検出できるリセットICを用いると、より高い安全な過電圧の検出が実現できるでしょう。
「車載」定格40V、バッテリーの電圧監視に最適なセンス分離2chリセットIC
5~10V検出
シリーズ名
PST122A
不定領域をなくして安全領域を確保する
MCUに動作電圧範囲があるのと同様に、リセットICにも安定して動作することができる電圧の範囲があります。
標準的なリセットICでは監視対象の電源をリセットIC自身が動作するための電源として使用するため、監視対象の電源がリセットICの動作電圧範囲を下回った場合には正常に動作できず、不定状態(リセット検出状態を保てない)が発生し、MCUの誤動作を引き起こす可能性があります。
この問題はリセットの最低動作電圧に近い1V付近の電圧監視時に顕著に表れます。
センス分離型のリセットICは"監視対象の電源"と"リセットICの電源"の入力端子をそれぞれ個別に設けることで、この問題を解決します。
オフシーケンスをコントロールすることに活用する
多くの電子機器にはマイコン(MCU)*などが搭載されており、複数の電源ラインがあり、立ち上がりや立下りを順番通りに行わないと破壊や誤動作につながる恐れがあります。
リセットICは電圧を監視する役目を持っており、オープンドレインの出力端子を持っているたデザインによっては、立下がりシーケンスを補助する役割で使用されることがあります。
ただし、リセットICのオープンドレイン端子はON抵抗が高く外付けの電荷を抜くには時間がかかかってしまうという欠点もあります。
オフシーケンスのコントロールに特化したICの紹介
ディスチャージICとは
ディスチャージICは、その名の通り出力容量を放電するために使用するICです。
電気回路を設計する際にはディスクリートのFETやリセットIC(オープンドレインタイプ)が使用されていました。
ミネベアミツミでは、簡単にオフシーケンスをコントロールしたいとの市場要望を受けてトランジスタととインバータで構成された、ディスチャージICを量産しています。
電源ICの出力容量を放電するIC ”ディスチャージIC”
3.ミネベアミツミのリセットIC
リセットセレクト
標準リセットIC
構成例 | 出力論理 | 最大定格 | シリーズ型名 | 出力タイプ |
遅延時間 |
センス分離 |
マニュアルリセット |
シリーズ (パッケージ) |
単機能リセット |
Active Low | 12V | IC-PST81 | CMOS出力 |
ー |
ー |
ー |
PST81□□R□ (SSON-4) |
PST81□□U□ (SC-82) | ||||||||
PST81□□N□ (SOT-25) | ||||||||
IC-PST82 | N-chオープンドレイン |
ー |
ー |
ー |
PST82□□R□ (SSON-4) | |||
PST82□□U□ (SC-82) | ||||||||
PST82□□N□ (SOT-25) | ||||||||
7V | IC-PST86 | N-chオープンドレイン |
ー |
ー |
ー |
IC-PST86□□R□ (SSON-4) | ||
IC-PST86□□U□ (SC-82) | ||||||||
IC-PST86□□N□ (SOT-25) | ||||||||
センス分離型 リセットIC自身の電源電圧とは別の電圧を監視できる |
Active Low | 12V | PST851A | CMOS出力 |
ー |
〇 |
ー |
PST851A□□□R□ (SSON-4) |
PST851A□□□U□ (SC-82) | ||||||||
PST851A□□□N□ (SOT-25) | ||||||||
PST852A | N-chオープンドレイン |
ー |
〇 |
ー |
PST852A□□□R□ (SSON-4) | |||
PST852A□□□U□ (SC-82) | ||||||||
PST852A□□□N□ (SOT-25) |
構成例 | 出力論理 | 最大定格 | シリーズ型名 | 出力タイプ |
遅延時間 |
センス分離 |
マニュアルリセット |
シリーズ (パッケージ) |
遅延端子あり |
Active Low | 12V | IC-PST83 | CMOS出力 |
外部設定 |
ー |
ー |
PST83□□R□ (SSON-4) |
PST83□□U□ (SC-82) | ||||||||
PST83□□N□ (SOT-25) | ||||||||
IC-PST84 | N-chオープンドレイン |
外部設定 |
ー |
ー |
PST84□□R□ (SSON-4) | |||
PST84□□U□ (SC-82) | ||||||||
PST84□□N□ (SOT-25) | ||||||||
7V | PST893A | CMOS出力 |
外部設定 |
ー |
ー |
PST893A□□□R□ (PLP-4) | ||
PST893A□□□U□ (SC-82) | ||||||||
PST893A□□□N□ (SOT-25) | ||||||||
PST894A | N-chオープンドレイン |
外部設定 |
ー |
ー |
PST894A□□□R□ (PLP-4) | |||
PST894A□□□U□ (SC-82) | ||||||||
PST894A□□□N□ (SOT-25) | ||||||||
PST89DA | CMOS出力 |
外部設定 |
ー |
ー |
PST89DA□□□R□ (PLP-4C) | |||
PST89EA | N-chオープンドレイン |
外部設定 |
ー |
ー |
PST89EA□□□R□ (PLP-4C) | |||
遅延端子あり / センス分離型 リセットIC自身の電源電圧とは別の電圧を監視できる |
Active Low | 6.5V | PST853A |
CMOS出力 |
外部設定 |
〇 |
ー |
PST893R□□□N□ (SOT-25) |
PST854A |
N-chオープン |
外部設定 |
〇 |
ー |
PST894R□□□N□ (SOT-25) | |||
Active Low | 40V | PST114 | N-chオープンドレイン |
外部設定 |
〇 |
ー |
PST114□□□N□ (SOT-26) | |
Active High | 40V | PST11D | N-chオープンドレイン |
外部設定 |
〇 |
ー |
PST11D□□□N□ (SOT-26) | |
遅延端子あり / マニュアルリセット付き 監視対象の電圧にかかわらずMR端子への信号でリセット信号を出力できる。 |
Active Low | 6.5V | PST893R |
CMOS出力 |
外部設定 |
ー |
〇 |
PST893R□□□N□ (SOT-25) |
Active Low | 6.5V | PST894R |
N-chオープンドレイン |
外部設定 |
ー |
〇 |
PST894R□□□N□ (SOT-25) | |
遅延内蔵(Timer内蔵) |
Active Low | 7V | PST809 | CMOS出力 |
内部設定 |
ー |
ー |
PST809□□□□U□ (SC-82) |
PST809□□□□N□ (SOT-23) | ||||||||
PST803 | N-chオープンドレイン |
内部設定 |
ー |
ー |
PST803□□□□U□ (SC-82) | |||
PST803□□□□N□ (SOT-23) | ||||||||
Active Low | 6V | PST87xA | CMOS出力 |
内部設定 |
ー |
ー |
PST87□A□□□R□ (SSON-4) | |
PST87□A□□□U□ (SC-82) | ||||||||
PST87□A□□□N□ (SOT-23) | ||||||||
PST88xA | N-chオープンドレイン |
内部設定 |
ー |
ー |
PST88□A□□□R□ (SSON-4) | |||
PST88□A□□□U□ (SC-82) | ||||||||
PST88□A□□□N□ (SOT-23) | ||||||||
Active High | 7V | PST810 | CMOS出力 |
内部設定 |
ー |
ー |
PST810□□□□U□ (SC-82) | |
PST810□□□□N□ (SOT-23) | ||||||||
PST804 | N-chオープン |
内部設定 |
ー |
ー |
PST804□□□□U□ (SC-82) | |||
PST804□□□□N□ (SOT-23) | ||||||||
遅延内蔵(Timer内蔵)/ マニュアルリセット付き 監視対象の電圧にかかわらず MR端子への信号でリセット信号を出力できる |
Active L | 6V | PST87xR | CMOS出力 |
内部設定 |
ー |
〇 |
PST87□R□□□R□ (SSON-4) |
PST87□R□□□U□ (SC-82) | ||||||||
PST87□R□□□N□ (SOT-25) | ||||||||
PST88xR | N-chオープンドレイン |
内部設定 |
ー |
〇 |
PST88□R□□□R□ (SSON-4) | |||
PST88□R□□□U□ (SC-82) | ||||||||
PST88□R□□□N□ (SOT-25) | ||||||||
12V | IC-PST596 | N-chオープンドレイン |
内部設定/50msec |
ー |
〇 |
PST596□N (SOT-25) | ||
IC-PST597 | N-chオープンドレイン |
内部設定/100msec |
ー |
〇 |
PST597□N (SOT-25) | |||
IC-PST598 | N-chオープンドレイン |
内部設定/200msec |
ー |
〇 |
PST598□N (SOT-25) |
「車載」定格40V、バッテリーの電圧監視に最適なセンス分離リセットIC
構成例 | 出力論理 | 最大定格 | シリーズ型名 | 出力タイプ |
遅延時間 |
センス分離 |
マニュアルリセット |
シリーズ (パッケージ) |
遅延端子あり / センス分離 / 1ch リセットIC自身の電源電圧とは別の電圧を監視できる |
Active Low | 40V | PST114 | N-chオープンドレイン |
外部設定 |
〇 |
ー |
PST114□□□N□ (SOT-26) |
Active High | 40V | PST11D | N-chオープンドレイン |
外部設定 |
〇 |
ー |
PST11D□□□N□ (SOT-26) | |
遅延端子なし/センス分離/2ch リセットIC自身の電源電圧とは別の2つの電圧を監視できる |
CH1:Active L / CH2:Active L | 40V | PST122A | N-chオープンドレイン |
- |
〇 |
ー |
PST122A□□NRH (SOT-26B) |
CH1:Active L / CH2:Active H | PST122B | N-chオープンドレイン |
- |
〇 |
ー |
PST122B□□NRH (SOT-26B) | ||
CH1:Active H / CH2:Active L | 40V | PST122C | N-chオープンドレイン |
- |
〇 |
ー |
PST122C□□NRH (SOT-26B) | |
CH1:Active H / CH2:Active H | PST122D | N-chオープンドレイン |
- |
〇 |
ー |
PST122D□□NRH (SOT-26B) |
導入をご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。