ベアリングとは?
役割や使われる製品、構造などを解説
ベアリングは回転するものの軸を支えるための部品で、さまざまな機械の中で使われています。しかし、普段目にする機会が多くないため、その役割や構造などについて詳しく知っている人は少ないのではないでしょうか。
ここでは、私たちの暮らしに欠かせないベアリングについて、その役割や実際に使われている製品、種類、構造などについて解説します。
1. ベアリングの役割とは?
ベアリングは回転するものの軸を支える部品です。軸受とも呼ばれます。ベアリングには次のような2つの大きな役割があります。
摩擦を減らして回転を滑らかにする
回転体の摩擦を減らして回転を滑らかにすることがベアリングの役割です。
回転する軸と、それを支える部分には、摩擦が生じます。摩擦には物が動くのを妨げる性質があるため、その影響を受けながらスムーズに回転するには、大きなエネルギーが必要です。ベアリングを用いることで、回転時に発生する摩擦を減らし、少ないエネルギーで滑らかな回転を実現できます。
回転する軸を正しい位置に保つ
回転軸を支え、正しい位置に保つことも、ベアリングの役割です。回転する際、軸には大きな負荷がかかります。軸が安定しないまま回転すると、周囲の部品を傷つけたり、回転軸が壊れたりする可能性もあります。ベアリングによって、回転軸を正しい位置で保持することで、安定的に長時間にわたって繰り返し機械を使用できるのです。
2. ベアリングの歴史
ベアリングの歴史は紀元前にまでさかのぼります。古代メソポタミアでは、大きく重い石を運ぶ際に、ベアリングの原理が使われていました。また、15世紀に活躍した、ルネサンス期を代表するイタリアの芸術家、レオナルド・ダ・ヴィンチが、ベアリングの基本的な構造について、アイディアスケッチを残していたことが知られています。
ベアリングが本格的に発展を遂げたのは18世紀後半になってからです。産業革命によって、機械工業が発達し、鉄鋼の大量生産が可能になると、ベアリングの重要性も高まり、さまざまな種類のベアリングが作られるようになりました。
一方、日本でベアリングの製造が盛んになったのは戦後になってからです。特に1950年代以降は、洗濯機や冷蔵庫、テレビといった家電の普及や、自動車産業の成長をきっかけに、国内で作られるベアリングの精度や性能も飛躍的に向上しました。日本のベアリング製造の高い技術は、現在でも世界中で高い評価を得ています。
3. ベアリングが使われている製品
ベアリングは製品をスムーズに作動させるために必要不可欠な部品です。あらゆる機械産業で使われていることから、ベアリングは「機械産業のコメ」とも呼ばれています。ベアリングが使われている代表的な製品を紹介します。
自動車
ベアリングが使われている代表的な製品は自動車です。エンジンやコンプレッサ、油圧装置といった駆動装置はもちろん、ウィンカーやカーエアコンなどの電装品、さらにはドアや内装品まで、さまざまな駆動部品に使われているモーターにベアリングが採用されています。自動車1台に使用されるベアリングは100~150個にものぼります。
家電製品や家庭用品
家電製品や家庭用品はベアリングが使われている代表的な製品です。冷蔵庫や掃除機、エアコン、洗濯機、扇風機など、モーターで動く製品にベアリングは欠かせません。また、電気を使わない家庭用品にもベアリングが多く使われています。扉や蓋を開閉させるためのヒンジ(蝶番)がついている窓枠や引き出し、釣り用のリール、ヨーヨー、ハンドスピナーなどの玩具といった多種多様な製品にもベアリングが使われています。
社会を支えるさまざまな機器
社会を支えるさまざまな機器にもベアリングが使われています。電車、飛行機、船といった交通機関にもベアリングが欠かせません。さらに、風力発電機といったインフラをはじめ、MRIやレントゲンなどの医療機器、建物の免震装置やエレベーター、エスカレーターなどの設備もベアリングが活かされている製品です。
4. ベアリングの種類
ベアリングの用途は多岐にわたるため、さまざまな種類のベアリングが存在します。
ベアリングは、構成部品のひとつである転動体の有無で「転がり軸受」と「すべり軸受」に分類されます。中でも幅広く使われているのが、転がり軸受です。転がり軸受は転動体と呼ばれる部分が回転しながら転動面を移動し荷重を支える仕組みです。さらに、転がり軸受は転動体の形状によって分類されます。それぞれについて紹介します。
玉軸受(ボールベアリング)
玉軸受(ボールベアリング)は、転動体に球体状の「玉(ボール)」を使っているベアリングです。ベアリングの中に配置された複数の玉がそれぞれ1点で荷重を支える仕組みです。軸と接触する部分が少なく、摩擦を大きく低減できるため、高速で回転するものに向いています。玉軸受の中でも多く使われているものに、ラジアル玉軸受やスラスト玉軸受があります。
ころ軸受(ローラーベアリング)
ころ軸受(ローラーベアリング)は、転動体に筒状の「ころ(ローラー)」を使っているベアリングです。ころには「円筒ころ」「円錐ころ」「針状ころ」など、いろいろな種類があります。ころは線で荷重を受けるので、より重い荷重に耐えることが可能です。玉軸受よりも大きな荷重がかかる場面での使用に向いています。
転動体のない「すべり軸受」
転動体を活用する転がり軸受に対し、転動体のないベアリングをすべり軸受と呼びます。
すべり軸受は、転動体がないため、部品の内面全体で荷重を受ける仕組みです。転がり軸受に比べて、シンプルな造りで壊れにくいのが特徴です。すべり軸受には以下のような種類があります。
すべり軸受の種類と特長
スクロールできます
種類 |
特長 |
---|---|
球面すべり軸受 | すべる部分が丸みを帯びた球面になっているため、どの角度から力が入っても自動的に傾いて荷重を受けることができる |
流体動圧軸受 | 軸の回転によって発生する圧力が軸と面の間に油膜を形成し、滑らかな回転を実現させる |
静圧軸受 | 外部の機器や設備から油を供給し、油膜を作ることで滑らかな回転を実現させる |
5. ベアリングにかかる荷重
ベアリングを選ぶ際には、荷重を受ける方向も考慮する必要があり、ベアリングにかかる荷重はベアリングに対する方向で分類されます。ベアリングの軸に対して垂直にかかる荷重が「ラジアル荷重」です。一方、ベアリングの軸に対して同じ方向にかかる荷重は「アキシアル荷重(スラスト荷重)」です。
同じ種類のベアリングでも、ラジアル荷重とアキシアル荷重のそれぞれに対応した製品が作られています。
例えば、玉軸受の場合、「ラジアル玉軸受」と「アキシアル玉軸受(スラスト玉軸受)」に分類され、さらに特徴ごとに細分化されます。この分類はすべり軸受においても同様です。
6. 転がり軸受の基本的な構造
転がり軸受の基本的な構造は、内輪、外輪、転動体、保持器の4つです。
内輪と外輪の間に転動体が等間隔で並び、それが回転することによって滑らかな回転を実現します。保持器は、転動体の間隔を保ち、正しく回るように位置を決める役割があります。この転動体が玉(ボール)なのが玉軸受で、円筒や円錐、針状になっているものがころ軸受です。
7. グリースにも重要な役割がある
転がり軸受の場合、グリースと呼ばれる潤滑剤はとても重要な役割を果たします。
グリースは半固体状のものを指し、ベアリングの外に流れ出さないようにシールという部品を使います。さらに、グリースを使うことで、摩擦による摩耗やサビの発生の予防や、機械の寿命の延長など、トラブルを防ぐ効果が期待できます。グリースにはさまざまな種類があります。より高い効果を得るため、ベアリングの用途や使用環境に合ったグリースを使うことが重要です。
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