表面処理
軸受にとってサビは単純ながら故障原因となることが多く、十分な注意が必要です。サビは材質の固有の特性によるもの、水分、塩分、硫化分等環境条件によるもの、異種金属どうしが相接することにより電食として発生するものなどその原因もさまざまです。ミネベアの製品も材料によってはこのようなサビを防止するため、めっき等の表面処理を行います。表面処理にはこのような防食以外に耐摩耗性を向上させる目的のものもあり、軸受の安定した性能を得る上で重要です。
カドミめっき・亜鉛めっき・クロムめっき
産業機械用としては亜鉛めっきが使われる場合が多いのですが、一般に海水に対する耐食性はカドミめっきの方がすぐれています。亜鉛めっきはカドミめっきほど排水処理がむずかしくなく、量産コストは低くおさえることができます。カドミめっき、亜鉛めっき、亜鉛ニッケルめっきともめっき処理の後、クロメート処理を行うのが一般的です。これによりカドミめっきの色調を白色と黄色にかえることが可能です。また亜鉛めっきは三価クロメートによる白色系の発色となります。
ステンレス鋼の場合も耐食性を特に重視する場合はめっきを行うことがあります。たとえば海上救難機に使われる440C ボールと17-4PH レースを用いたスフェリカルは、ボールにはクロムめっき、レースにはカドミめっきをほどこしてあります。
(但し、一般産業用としてカドミめっきの適用は環境面で規制されています。)
亜鉛ニッケルめっき
高ニッケル含有の亜鉛めっきで、カドミめっきに比べ環境への負荷が低く抑えられ、高い耐食性を有するため、航空機向けの軸受けに用いられます。
パッシベーション (不動態化処理)
ステンレス鋼をめっきなしで使用する場合に、耐食性を保つためパッシベーション処理(不動態化処理)を行うことがあります。これは、部品の表面をアルカリその他で洗浄した後、硝酸に重クロム酸を溶かした液につけ、表面を清浄するとともに不活性な層を作り耐食性をあげようとするもので、機械加工中についた細かい汚れ(金属粉等が凝着したようなものも含む)を取り除いて、その後のサビ発生を防止する上で効果があります。
アノーダイズ・化学皮膜処理
純アルミニウムは表面にできる酸化物(Al2O3)が緻密な組織をもっており、それ以上酸化が進まないため耐食性がよいといわれます。通常スリーブ等に使用するアルミ合金は純アルミニウムほど耐食性がよくないため、アノーダイズまたは化学皮膜処理を行います。
アノーダイズとは、陽極酸化被膜一般にはアルマイトとも呼ばれ、アルミニウムを陽極(アノード)としてクロム酸や硫化溶液を電解させ、アルミニウムの上に多孔質の酸化皮膜を生成させる方法です。色は灰白色でやや光沢があります。また過圧水蒸気中で加熱する、水中で煮沸するなどの方法によってこのAl2O3に結晶水を与えて膨張させ、孔をふさいで耐食性を向上させることができます。また着色剤を使用すればさまざまな色をつけることができます。
化学皮膜処理とは商品名でアロダインまたはアロジンと呼ばれることもあります。これはアノーダイズのように電気的な皮膜生成法ではなく、化学反応によって保護皮膜を生成させる方法です。
厚みそのものはアノーダイズのように厚くはできず、0.002 ~ 0.003mm 程度です。色調は使用する薬剤によってかわります。
ロッドエンド、スフェリカル、スリーブによく使われる表面処理とその特長を整理したものが表20 です。
スクロールできます
処理 | 適用スペック | 特徴 | 色 | ミネベア滑り軸受での適用 |
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クロムめっき | AMS-QQ-C-320 |
|
銀白色 |
ボール球面 |
JIS H 8615 |
|
銀白色 |
ボール球面 |
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カドミめっき | AMS-QQ-P-416 |
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クロメートによる |
3 ピースボディ |
亜鉛めっき | JIS H 8610 |
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白色系三価クロメート色 |
3 ピースボディ |
亜鉛ニッケルめっき | AMS2417 |
|
クロメート処理により異なり |
3ピースボディ |
パッシベーション | AMS2700 |
|
無色 |
3 ピースボディ |
アノーダイズ | MIL-A-8625 |
|
灰白色 |
スリーブ |
化学皮膜処理 | MIL-C-5541 |
|
黄色又は白色が一般的 |
スリーブ |