IC(集積回路)とは?
基本構造や製造工程、使用例などを解説
IC(Integrated Circuit、集積回路)とは、電子機器において重要な役割を担う半導体製品です。
この記事では、ICの基本的な構造や製造工程、機能による用途の違いなどをわかりやすく解説します。併せて、現在のトレンドから今後の展望などについても詳しく見ていきましょう。
1. IC(集積回路)の基本構造
ICは、電子機器の制御や処理、記憶に欠かせない半導体製品です。
抵抗やコンデンサ、トランジスタといった半導体素子によって構成された回路を1つの小さなチップに集積した構造となっており、「集積回路」ともいいます。
ICには、「電源IC」「モーターIC」「データコンバータIC」「アンプIC」「メモリーIC」などさまざまな種類があり、用途に応じて使い分けられています。
2. ICの高集積化とムーアの法則
技術の進化により半導体素子の微細化が進み、ICに集積できる素子数は年々増え続けてきました。
大手半導体メーカー、インテル創業者の1人であるゴードン・ムーア氏は、1965年に「半導体の集積率は18ヵ月で2倍になる」と予測し、これは「ムーアの法則」と呼ばれています。
ICの高集積化はムーア氏の予測どおりに進み、現在ではLSIなどと呼ばれる大規模集積回路が一般的になりました。
しかし、半導体の微細化は物理的な限界に近づきつつあり、集積率がまったく向上しない「ポストムーア時代」が来るともいわれています。
一方で、ムーアの法則は減速しつつもまだまだ続くといった議論もあり、その要素のひとつが微細化ではなく立体化、つまり3D軸で集積率の向上が進んでいることです。
さらに、ICの進化において新たな指標と目されるのが、集積率ではなくエネルギー効率です。近年のエネルギー効率の向上には、目覚ましいものがあります。
3. ICの製造工程
ICはごく小さな電子部品です。ここでは、一般的なICの製造工程をご紹介します。
1. ウエハの作成
まずは、円柱状のシリコンの塊であるインゴットを、ワイヤーソーなどで薄くスライスします。こうしてできた円形の薄い板が「ウエハ」で、チップの土台です。
2. 成膜
ウエハにバリ取りや研磨、洗浄を施した後、表面に高温の酸素をあてて酸化させ、絶縁層となる酸化膜を形成します。また、酸素以外の物質をあてることで、ほかの薄膜を形成することも可能です。この過程を成膜といいます。
3. フォトリソグラフィ
フォトリソグラフィ(露光)は、成膜したウエハ上に、コンピューターで設計・作成した回路パターンを形成する工程です。まず、フォトレジストと呼ばれる感光剤を塗布したウエハに、紫外線などを照射して感光させることで、回路パターンを転写します。
その後、現像液などにつけることで感光していない部分を除去、あるいは感光している部分を除去し、回路パターンを露出させます。
なお、感光していない部分を除去する方法をネガ型、感光している部分を除去する方法をポジ型と呼び、製造するICの種類や目的に応じて使い分けが可能です。
4. エッチング
エッチングは、フォトリソグラフィにより露出した酸化膜や薄膜といった、不要な部分を除去する工程です。主な方法は、酸やアルカリなどの薬液を使用する「ウェットエッチング」、イオンを利用する「ドライエッチング」の2つで、コストや生産性、加工精度などにより使い分けます。
エッチングの後、さらに研磨を行います。
5. ドーピング
ドーピングは、ウエハの電気的特性を変更する工程です。不純物のないシリコンでできたウエハは絶縁体であり、このままでは電気が流れません。そこで、ドーパントと呼ばれる不純物イオンを添加することで、チップの特定の領域に電気が流れるようにします。ドーピングは、上でご説明した成膜の工程でも行うことがあります。
なお、成膜からドーピングまでの工程は何十回も繰り返されることがほとんどです。
6. 電極を形成(金属化)
次に、ウエハに電極を形成します。スパッタリングという技術によってウエハの表面に薄い金属膜を形成する方法や、ウエハに金属部を埋め込む方法があります。
7. ダイシング、パッケージング
ウエハ上のICチップを1つずつ切断する工程が「ダイシング」です。その後は、リードフレームと呼ばれる金属枠にチップを固定し、金線と接続。チップを保護するために樹脂でパッケージングして完成です。
4. ICの主な分類方法
ICの種類は豊富で、機能や用途も多岐にわたることから、複数の分類方法があります。ここでは、主な分類方法を解説します。
半導体の素子数による分類
ICは、チップに集積する半導体素子の数を目安として分類可能です。それぞれ少ないほうから、「SSI(100素子以下)」「MSI(100~1,000素子)」「LSI(1,000素子以上)」「VLSI(100万素子以上)」「ULSI(1,000万素子以上)」と分類されます。
なお、LSI、VLSI、ULSIといった高集積ICの用途の一例は、パソコンに実装されるマイクロプロセッサやGPUなどです。
機能や用途による分類
ICは、機能や用途によって「アナログIC」「デジタルIC」「ミックスドシグナルIC」の3つに分類することができます。主な機能と用途は下記のとおりです。
アナログIC
アナログICは、連続的なアナログ信号を処理するもの。アンプ、フィルター、電源管理などに使われます。
デジタルIC
デジタルICは、デジタル信号を処理するもの。コンピューターの心臓部でもあるメモリやCPUなどに使われます。
ミックスドシグナルIC
ミックスドシグナルICは、アナログとデジタル信号を両方処理することができるもの。携帯電話や自動車などに使われます。
構造による分類
ICは、構造の違いによって分類することも可能です。大きな分類は、平面構造の「プレーナー型」、立体構造の「非プレーナー型」の2つです。
さらに、非プレーナー型は、三次元構造でプレーナー型よりも小型化が可能な「FinFET型」、FinFET型よりさらに複雑な構造で電力消費の効率が非常に良い「ゲート・オール・アラウンド(Gate All Around:GAA)型」などに分類できます。
5. ICの使用例
ICは、私たちの暮らしやビジネスを豊かにしている多くの電子機器や機械設備のほとんどに使われているといっても過言ではありません。そして、そのような電子機器や技術の進化に伴い、ICも進化を続けています。ICの使用例の中でも、特に注目される分野をいくつかご紹介します。
リチウムイオン二次電池
リチウムイオン電池には、一度放電したら再充電はできない一次電池と、充電して繰り返し使用できる二次電池があります。このうち、充電可能なリチウムイオン二次電池を安全に使用するための専用ICが「リチウムイオン電池保護IC」です。
リチウムイオン二次電池は再充電可能でありながら、従来の充電式電池と比べエネルギー密度が高く、小型軽量化が可能なため、スマートフォンやデジタルカメラ、家庭用蓄電池、電気自動車(EV)などの電源として利用されています。
一方で、過充電や過放電、急激な温度変化などを制御する必要があり、リチウムイオン電池保護ICはこれらの状態を検出すると、リチウムイオン二次電池への充電や放電を自動的に停止します。
IoT
スマートホームやウエアラブルデバイスといったIoT機器にはセンシング技術が必須であり、センサーにもICは欠かせません。
また、IoT機器には、電源の長寿命化や自律性、高い精度などが求められており、電源ICの期待とニーズがますます高まっています。
人工知能(AI)と機械学習
近年では人工知能(AI)、特に大規模な機械学習とアウトプットが可能な生成AIが進化し、活用シーンも増えるばかりです。ここでも、ICは使用されています。
機械学習と生成AIにおいて、膨大なデータを処理する役割は特にGPUが担っていますが、GPUやCPUもICの一種です。また、データ量が多ければ消費電力も多くなるため、電源ICの役割も重要さを増しています。
6. アナログICのことなら、開発から一貫生産できるミネベアミツミにご相談を
ICはあらゆる電子機器の核心であるとともに、今後ますますの進化が期待される分野です。さまざまな半導体メーカーが研究開発を続け、技術革新を目指しています。
ミネベアミツミでは、このような社会背景やニーズを受け、電源IC、モーターIC、データコンバータIC、アンプICなど、さまざまな用途のアナログICを取り扱っています。ICでお困りのことやご相談がございましたら、いつでもお気軽にご連絡ください。
導入をご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。